愛より淡く
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「花のお遍路」という小説を読んだ。川上弘美さん選の恋愛小説集に入っていた。
著者は、その昔「ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか♪」と歌うCMに出ていらした野阪昭如さんだ。
兄妹のなんともせつない話だった。妹は、目が不自由になってしまっている。かつての愛くるしい面影はどこにもなく、髪はほとんど抜け落ちて白目をむいた凄まじい形相になっている。
彼女は、若い頃から生活を支えるために身体を売ってきた。
不衛生な環境の下で、信じられないくらいの数の男に身を任せてきたので、身体がボロボロになってしまったようだ。何かの毒にあたって目も見えなくなってしまっている。
いつしか容色衰えて、化け物のような姿になってしまってからは、客をとることもできず、さりとて、すでに男なしではいられない身体になってしまった哀れな妹のために
自分が客のふりをして妹を抱いてやる、というくだりを読んで
なんだか切なくてどうしようもなくなった。
だけど、そこに何かを超越した美しい愛を見たような気がした。
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