嫌いな食べ物「キュウリ」
酷く苛々が溜まる。私の中にある唯の馬鹿な子供を前面に押し出してしまうとすれば、其れは単なる八つ当たりに過ぎない。私は現在の状態に納得出来ない。
金持ちの話なんて聞きたくない。其れは私が金に嫉妬しているからだ。格式高い家に生まれた私が(こう言って既に金とソサエティに拘っている)劣等感を感じる一番の要因だ。
環境の話なんて聞きたくない。其れは私が出来すぎた環境に嫉妬しているからだ。束縛を嫌う私が(こう言って既に私は私の場所を確保しようとしている)地理に束縛されているのに抵抗出来ない一番のアキレス腱だ。
私にあるものは内包的なものばかりで、取り巻きは何一つ無い。其れが気に食わない。私が漸く探し当てた何かでさえ、あの人には単なる水準以下のものに過ぎない。其れが気に食わない。私が懸命に生きた時間の其の何分の一かで、あの人は同じものを、同じ価値を手に入れる。其れが気に食わない。そして私が費やす何時間かで得る開放感を、あの人は常に右手に携え、其れを生活の一部にしている。其れが気に食わない。
人間的な価値では無い。
其れが気に食わない。
同じように扱う、其れが気に食わない。違うように扱う、其れも気に食わない。
私が賢明に手に入れようとしているものに、そして手に入りにくいものに、あの人は何時も周りに従えて、気が向いたときにだけ少し手を出して利益をあげる。それが気に食わない。
人間的な価値では無いのだ。
環境だけの為に、私は此処まで腹を立てる。苛々が募る。腹が痛む。
私がそう思っているのを知ると、哀愁の目で見る、憐憫の目で見る。其れが気に食わない。
嫌いじゃないんです、好きなんです。
さくま