爆心地の塔の前で見上げると、青い空だった。
不思議に思った。
ここに居た人らは何処へ消え、今ここにある人らは何処から来たのか。
全ての歴史が正しく何かを動かしていけないのは。 そこに居た人らが居なくなるからだ。
聞くべき声はいつでもそこにある。 いや、そこにしか無ェ。
けど。
みんな居なくなってしまった。
何もかもが強引に消される兵器。 その下に居るのはモノ思う人間。
思う心さえ消される兵器。
それどころか、やがて全ての証人を消してく兵器。
爆心地の塔の前に立っていると。 その時ここに居たのは決して自分じゃねーてのに。
居ても不思議は無く。 今居なくなってても不思議は無いような感覚に襲われる。
その感覚のために、場を踏むのは、大事なことだ。
そこに居た人らは全て消えてしまい。 そこに居た人らの「あの頃」を知る人らも。 みな去っていき。
結局のとこ「そこに居た人らにしかわからねーこと」が。 ますます消えていく。
けど。
ヒロシマにしろナガサキにしろ桜木は。
限りなく膨れ上がるに違いねー憎しみよりも、ただ真実を伝える義務に目を向け。 そこに心置き換え静かに語り続けた多くの人の、その。
静けさにうたれる。
憎しみは真実すら伝えねェ。 憎しみは。
真実を冒涜し猜疑心だけを再生産する。
生き残った全ての人が静けさの中で語り継ごうとした何かを。 今生きてる人間が、黙って受け取ること。
それが意味だ。
むごたらしく死んでいい人間なんざ一人も居ない。
それを知るからこそ平和を誓おうとする。
てめえだけが可愛い人間にゃわかんねーこと。
全ての人間の利害が一致するなんてあり得ねぇと思いながらも。 どこかでそれを信じた。
平和が来る日を信じた人らの総数。
それが意味だ。
ナガサキの夜の灯は、だからこそ胸に気高く映る。
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