私的正論。

2002年09月27日(金) もの書く権利。

柳美里の例の小説に差し止めの判決が出たのは、すでに数日前か。
まるで腹に石でも飲んじまった様な、妙な重さを感じる、出来事だった。


もともと大昔から小説家は。

「俺のことを勝手に書いたろう」
「私を勝手にモデルにしている」

といった類の妄言に悩まされて来たが。

柳氏の場合は妄言でなく事実であったのだから、言い訳もクソも無ェ。
真実勝手に書いちまったんなら、そりゃ、誠心誠意謝るしか無ェだろう。


もの書く権利は誰にも有るが。
もの書く権利の裏側で果たさなきゃなんねェ義務についちゃ。

ここんとこ、すっかり忘れ去られちまってんのかもしれねーな。





インターネットの世界をのぞき見りゃ。
そこは日々、新しい係争で溢れてる。

一番くだらねーと思うのは、現実の知り合いを陥れようとしてるヤツ。
次にくだらねーのが、てめえの悪感情を誰かに知らせたくてしょうがねーヤツで。

次あたりに来ンのが、大昔の作家を悩ませた妄念がお得意な連中。


「それは俺のことなんじゃねーか」
「これは絶対に私のことだ」

みてェにヨ。
すぐ思いこんじまう連中。






身に覚えの有ることにゃ、誰しもドッキリすらぁな。
反対に身に覚えの無いことにゃ、まるで無関心。
ヘタすりゃ名指しで言われてても気付かなかったりすらぁな。

でまー。普通はヨ。
てめえの中に何かしら思い当たるフシが有るから、ギクッとするんだが。
なんちゅうか、思い当たるって以前に。
攻撃的、批判的言辞ちゅうもんは、みーんな自分に向いてる、みてーに。
思いこんじまう人らも、有るらしいんだナ。

難儀なこったが。
やめろともアホかとも言えねー。本人らは真剣に胃ィ痛めんだし。
桜木の知り合いにも、程度の差こそあれ何人か居るしヨ。

それに加えてインターネットの功罪で。
ちっと名が通りゃ、曖昧な中傷や批判も増えて来る。

気になって検索しまくるんだけど、フと我に返って情けなくなると。
寝不足の目で言ってるヤツも居た。




けど。

もの書く権利が誰にもある以上。
もの書くことの、良いも悪いも全部含め。
これからの時代生きてく人間は、全部飲み込んでかなきゃなんねーのかもしれねーナ。
そういう図太さしぶとさも、必要ってコト。




ま、それに、そもそも。

「自分のことを何か言われてるかも」

みてーな不快感ちゅうんは。
何もネットに限ったことでなく、日常でもゴロゴロしてら。

猜疑心の固まりになって気にしてたらキリが無ェ。
生きてく限り、人の目や口から逃れられはしねーんだから。
ただ、だからこそ、そんな疑い無しにつきあえる人間が尊く思えるだろ。
ネットであれ現実であれ。
腹にイチモツありそうなヤツは願い下げ。

後ろ手に隠しても見えている。

そら。誰かに投げつけた鋭利な石が。
あんたの掌にも、十字の傷を、つけている。







最近の桜木はヨ。

怒りちゅうより、空しさが溢れる。
あらゆるもんが、上流から怒濤のように押し流され。
溺れて死んでく人間は、まるでモノの様だ。
生きてる人間だけがいろんなもんを謳歌しているように見えるが。サテ。

明日の命は誰にも保証出来ないと来てる。

今朝食ったレトルトの添加物や。
夜食った果物の農薬。

ドリフのコントじゃねーんだヨ。
大げさに吐き出したって、笑いは取れ無ェさ。


それでこの際と、手近な苛立ちを晴らすためにPCの前に座り…。







桜木の草加に居る義姉サンは、遊びに来ててそろそろ帰ろうって時。

「さぁ、行ってみるか」

て言うんだよナ。


最初は慣れなくて、

「おや、これからどこか連れてってくれんのかナ」

なぞと思ったもんだが。




桜木もこの頃は。
ちっと、行ってみるかの気分になっている。
なぁ、目の前を流れてく言葉。元気が無ェぞ。


もの書く権利は広がったがヨ。
見てるもん感じてるもんは、どうなった。

斬ったり斬られたり元気良く、ちゅうわけにもいかねェ世の中。
なあ。
死人のような顔をして。



ワタシノコトデスカ、なんてよ。言ってくれるなよ。



考える感じる自由の方をよ。
なんでお留守にしてんだよ。


人のケツの臭いを嗅ぐ前に。
てめえのケツ拭け。






そろそろ行ってみるか、桜木。

自習の時間は、終わりにするか。







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桜木



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