私は最近、自分が輝いて見える。
歌が上手くなりたくて音大へ行くと決意した。だから頑張っている。 その後のこと、そりゃあいつも考えるけれど。 だって、音大なんていったって就職のあてなどそうそうないし、 プロのオペラ歌手やソリストとして演奏して生きていくなんて不可能に近い。 それに、まず音大へ行くということが大きすぎる目標。 実力、4年間の学費、生活費、それにかかる親への負担、 卒業した後、我が家のお金は使いつくされてしまうんじゃないかと思う。 先のことは考えれば考えるほど不安で、時々心もとないけれど それでも「やりたい」と思う。 私の最大の夢だから。いちばんに壮大で、輝かしくて、美しい私の夢。 だから、私は今頑張っている、歌が上手くなりたいから。 不安が片隅にあるけれど、やめようという気が起こらない。 歌をうたうのが楽しいから。 親への負担の大きさは知っている、けれどあきらめようと思わないのは 「親は子が幸せそうにしているのを見るのが幸せなのだ」と思ってくれているから、 おじいちゃんもおばあちゃんも応援してくれるから、 先生たちが力になってくれるから、 だから、 頑張れば、夢が始動することがわかったから。
輝いている自分を自覚したら、 おしつぶされそうだった心から、暗雲がふっと消えて、 今度は周りが見えてきた。 自分のことで精一杯だった自分、 夢に無我夢中で向かっていける人をうとましがっていた自分、 幸せそうに生きている人たちを憎らしく思っていた、 自分の幸せにも気付かないで。 まわりの優しさにも気付かないで。 その人たちだって悩んだのであろうことを知らないふりをして。 自分がひどく醜かった・・・ だから、そんな人を好きになってくれる人なんているはずはないと 「恋」なんて遠い世界の話だった。 けれど、今はどうだろう。 私は、私が少し好きになったから、 「あの人が私を想ってくれたら・・・」なんて期待をしている・・・願っている。
悩みがない毎日だから輝いているんじゃない。 頑張れる毎日だから私は輝いているんだと思う。
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