映画のワンシーンをみるかのように、ときどき再生される光景と記憶。 あたたかい陽のさしこむ温室のろうかで、レモン色の服をきた赤ちゃんの私。たどたどしく大きなカップグラスを両手でつつんで、とどまる牛乳を飲もうとしている。 なんだかあたたかく、ぼんやりと、だけどくっきりと思い出せる景色。そう、私は過去に絶対、この景色のなかにいたんだ。そんな確信をもてる感じの。 こんなにも身近な感じがするのに、客観的にも思えるのは、ずっと昔、幼かった頃にこの光景を一枚の写真でみた、そのせいなのかもしれない。 なぜかこの光景は私の記憶から少しも薄れたり、揺らぐことがない。 なんだか静かなのに、陽の明るさと、陽の温かさと、陽の光がぼんやりとうかぶ音がある。 私はそれらがみちたやさしいところに座っているのだ。 ことばも、かんがえもなく。 だけど、その陽と白とぼんやりとしたあたたかいなかに、私はとこんと座っているのだ。
ただそれだけの景色が。ただそれだけの記憶が、こんなにも私にはいとおしい。
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