---□□草原で独り言□□---

2006年11月19日(日) あのときの夜空

気づいたとき、私が最も心ひかれていたのは宇宙でした。
小学生のころは図書館といえば星座や、それにまつわるギリシャ神話の本ばかり読んでいた。他になにを読んでいたかはあまり記憶にない。
月を見るのが大好きだった。星を見るのが大好きだった。夜空を眺めるのが大好きだった。学校の理科準備室で天体暦付きのカレンダーを見つけて、先生に「あれがほしい」と言った。望遠鏡も買ってもらった。それでオリオン座の星雲や、彗星をみた。
中学生になっても、私はやはり宇宙にひかれていた。芸能人とか、オシャレとか、体型だとか、恋愛だとか、あまり興味がなかった。「私はくせ毛だな」とか「私は流行を全然知らないな」とか思うことはあったけど、別にたいして悩んでいるワケでもなく、事実として認識しているというだけで。ましてや、友達がいなくなるかもとかそんなことは考えもしなかったし、「べつにひとりでもいい」と思っていた。「愛」とか「優しさ」とか本当、そんなのどうでもよくて。「人間」の温度のぬくさがむしろ嫌いだったかもしれない。人間が「汚」に感じられた。私はあの頃なにか色々葛藤していて、そしてなんか色んなものが嫌だった。「美しい世界へ逃げたい」そんな感じだった。
悩みに満ちた私に、しかし、夜は毎日かならずおとずれてくれて、私は安らぐことができた。星を眺められる聖なる時間、夜は静かに満ちていた。
夜空をずっと黙って眺めていると、ふっと色んなことがわからなくなる瞬間がある。夜空のドームがどこまで広がっているのか…そうですね、漫画でいい言葉があったので引用します。宇宙と地球の境目がわからなくなるんです(引用:「宇宙と地球の境目」 『プラネテス』著 幸村誠) 地球を出て宇宙服を着なければ行けないあの星雲に、手がぐいーんとのびて触れられそうなきがする。懐中電灯でその星を照らせそうなきがする。そう今この手のなかの、懐中電灯の光がいまこの夜空をつきすすんで宇宙をかけているのなら、私も宇宙にふれたきがする。遠く冷たいものではないように感じてくるんです。でもじっさいは謎と不思議の宝庫で一人ベッドで考えたなら冷たさや虚無を感じるばかり。なのに夜空をずっと眺めていたなら、いつしか空気がとても優しく語りかけてくれるような穏やかが胸をつつむ。まるで大気と友達になって星を眺めているようだった。

…ただそんだけな話


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S.Soraka [MAIL]