痛みに耐えることになれていたのなら、 傷つくことをおそれない勇気を持てただろうか。 悲しみを自分で慰められたなら、 人に自ら近づけただろうか。
痛みを受けると、少しでも自分を強く見せようと、虚栄をはって。 悲しみを感じると、恥ずかしくなって、逃げたくなって。
私は私が成し遂げたいことを努力してきたつもりだけれど、 それ意外にはなんの自信もない。
人と特別強い絆をたくさん持っているわけではなく、 話し上手なわけでもない。 誰かとちょーばかになって馬鹿騒ぎすることや、 いわゆるノリってやつを何度も経験したわけでもなく。
私はいままで誰かに助けられながら、 そして感謝しながら、美しい心でありたいと願いながら、 ただひとつ自分の夢を実現するためだけに ただ黙々と努力を重ねてきただけで。 家族や信頼できる人はもちろんいたけれど、 仲間がいた時期や、いない時期もあったけれど、 私は一人でもただ努力を続けると決めていて。 実際、誰かに泣きついた覚えもないし 誰かに慰めようとしてもらったこともない。 ああ、でも受験前は先生にずいぶん甘えていたか。 けれど、それだけだ。 誰か本当に心から愛せる人がいたらいいとは思ったけれど、 私は私を心の支えにしようと思っていた。 私は私の力で夢をつかみたかった。 それが私の支えで、私の聖域で。 誰に立ち入られたこともない、 立ち入らせたこともない、 私が私である証の柱だった。
なのに、 その支えがなくなったら、どうすればいい。 私は私ひとりで努力できる人間になれたのに、 慰めがない静かな世界にいままで生きてきたのに。
いまさら、誰かと生きることをどう学べばいい。 私は私に誇らしくなれたとしても、 だれかに対して誇らしいことをなにか持っているか。
人とのつながりが重要なこの社会で、 人と関わることをおそれる私は、 人にきずつけられることに慣れていない私は、 生まれたてのただのこどもなんだ。 泣いてばかりいる、こどもなんだ。
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