ふつうっぽい日記
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2002年02月21日(木) 鬼ごっこ『ねこどん』編

学生時代に私の書いた芝居の脚本で『星空の下で』というのがある。赤川次郎原作『夢から醒めた夢』のパロディっぽいようなストーリー。その第三場に公園での女の子二人の掛け合いがあった。2人は別々の世界に住んでいる。1人はもうこの世にはいない、死んじゃったお母さん思いの女の子(マリ子)。もう1人はお姉ちゃんといつも喧嘩してばっかりの、鬼ごっこ嫌いな弱虫の女の子(朱里:ジュリ)。ちなみに、私は自分の描いた鬼ごっこ嫌いの女の子を21歳にして演じたのであった(笑)小学校2〜3年生くらいの設定だっただろうか。

〜第三場〜

朱里がとぼとぼと、たぬきのぬいぐるみを抱いて歩いている。夕方である。朱里は、家を出てきたのである。公園。マリ子も公園にいる。

朱里:(寂し気な顔をしている。涙をぬぐいながら)お姉ちゃんのバカ…

マリ子:ねえ。

朱里:?…え?

マリ子:一緒に遊ばない?

朱里:(元気がなく、下を向いている)

マリ子:(独白)私からは、何でも見えるのに…この子には、聞こえてないのかな…

朱里:何か言った?

マリ子:(希望をもち)一緒に遊ぼ!

朱里:何して遊ぶの?

マリ子:そうねぇ。何ができるかなぁ…缶蹴りしよ!

朱里:缶蹴り?

マリ子:つまんない?じゃあ、鬼ゴッコにする?

朱里:鬼ゴッコ?

マリ子:たかたか鬼!!

朱里:二人で?

マリ子:…そうねぇ。

朱里:朱里、鬼ゴッコ嫌い。

マリ子:どうして?

朱里:だって私、いっつも鬼なんだもん。

マリ子:いっつも?

朱里:うん。だから、学校のお昼休みも嫌。

マリ子:学校…

朱里:あなたは学校のお昼休みは何してるの?

マリ子:…鬼ゴッコしてた。今は…

朱里:鬼ゴッコ好きなの?

マリ子:(明るくなる)とっても大好き!色付き鬼とか…ブランコで遊ぶのも好きよ。ほら…なんて言ったっけ、ビューンってこいで、クルッて回って、鎖をバッテンにしてさ、外からつかれないように逃げるの。でも、地面に書いた便所に落っこちたらダメなの。

朱里:ひょっとして、ネコドン?

-----以上『星空の下で』抜粋----

小学校の教師を目指していたとはいえ、21歳で小学生を演じるっていうのは、体力的に疲れるものがあった。舞台では上のやりとりの後、「靴投げ」が行われるのだ。鬼ゴッコ嫌いの朱里は靴を飛ばすのも下手くそ。マリ子は優しく朱里の靴を拾いに行くのだ。

現実の世界に生きてないので、靴投げもできないのだ。その説明を「裸足が好きなの」と言ってごまかし、朱里は「変わってるね」と言いながらも受け入れる。そして、二人は友だちになる。「いつまでも、一番のお友達」という誓いをしようと、朱里はマリ子に言い、マリ子は「私が死んでいたら?」ということを朱里に言う。それに対して「子どもは死なないんだから、いつまでも、で、いいと思うの」とマリ子に返す。

その後の展開としては、マリ子の死の回想シーンがあり、朱里のお姉さんの彼氏(角次郎)が不慮の事故で亡くなる。二人の「死」のシーンとしては、星を見上げて手が届きそうだと手を大きく広げて伸ばして底に落ちて行くという設定にした。マリ子は「あ!お星さまが、落ちた!」と、角次郎は「あ…星が…落ちた」と言い、現実の世界から姿を消す。無邪気な朱里には、現実から姿を消した二人の姿が見える。

彼の死を受け入れるために心が激しく揺れ動く姉と、死は現実ではないと訴える無邪気な妹との間で交わされる、一足早く「星」になったマリ子の母親の言葉、そして、角次郎の優しい朱里への言葉。エピローグはマリ子が朱里に精一杯のさよならを言い、そして同じく「星」になった角次郎に「お母さん、見てるから、頑張るの、私」と前向きになったことを伝えて、幕となる。

脚本にも登場させた鬼ゴッコ「ねこどん」は、本当に小学校時代にやっていた。たしかこの芝居を一緒に作った仲間も知っていた遊びだったと思うのだが…(たしか、、)


KAZU |MAIL