ふつうっぽい日記
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2011年04月24日(日) |
それは薄暗い部屋から |
「KAZUさん、私ね、元気出して欲しいなって思う人がいるの。 私は一緒に行けないけど、フォローしてやっていただけないかしら。」
あたしが「美容アドバイザー」としてちょっぴり活動的だった頃。 同じ住宅に住んでいたMさんがこうあたしに伝えてきた。
Mさんが元気づけたい人Yさん。
あたしはYさんの存在を知らなかった。 Yさんの周りで起きていることなんてまったく知らなかった。 Mさんはそんなあたしの反応に驚いていた。
「たくさん、花輪が出ていたんだけど。本当に、KAZUさん知らなかったの?」
そう言われたのも、あたしがYさんと本格的に関わって数ヶ月が経った頃だった、
Yさんは子どもを病気で亡くされてあったのだ。 Yさんのお宅に行くと幼稚園に通う女の子が一人いた。 あたしはYさんのお宅にはこの子一人だけだとずっと思い込んでいた。
初めてYさんのお宅に訪問したとき、たしかにYさんの表情はどこか重いようなところがあった。 話ながら笑顔も出てはいたがすぐにその笑顔は真顔に変わっていた。 Yさんと関わる部屋も、薄暗く、彼女の内面を映しているかのようだったことを覚えている。 YさんのMさんとの関係もいわゆる「ママ友」ゆえに断ることができなかったからなのか?とも勝手に想像したものだった。
あたしは手始めに「お試しエステ」をさせていただいた。 Mさんからの紹介ということで良心的な価格でのサービス。 Yさんの自宅でYさんの希望する時間に機材を持ち込んで進める。
あたしはどちらかというと、話し下手である。(「聞く」ことが、「聞き続ける」その時間が長いという理由で) よって、訪問販売だとかいう類の仕事は不向きだと決めつけていた。 幸い、あたしが関わっていた仕事は「ノルマ」というものが一切無く、自分のペースで活動することを優先できた。 美容関連の講習を受けて、知らないことが分かったことや、自分自身のケアの意味を知った機会に恵まれたことだけでもあたしは満足だった。 そう、「教養のため」美容領域に足を突っこんでみたのである。 それまでほとんど美容には無関心で、化粧も適当、眉も気づいたら繋がっていた、ということもよくあることだった。
今、ふり返るにあたしは「学ぶ病」なのかもしれない。 その「病」を受容し、共生していく覚悟が出来たのが、ここ1,2年といえそうだ。
先輩アドバイザーのトークは守備範囲が広く、人生の味ともいえるものがふんだんに盛り込まれ、「あたしには無理かも知れない…」とため息をつきそうになった事もあった。 顧客のほとんどが子持ちの主婦であり、子育て経験、出産経験が全くないあたしには、厳しい道を選んでしまったかも知れない、という後悔のような気持ちを持ったものだ。
しかし、思い切って扉を開くと、思いがけない縁が待っていた。 その扉を開くことは、イコール、「固定観念からの解放」だった。
子持ちの主婦である女性は、あたしが「子ども待ち」であった時に共感してくれたり、声援を送ってくれたり、温かい歩み寄りをしてくださった。 そういう人たちとの関わりもありながらの、Yさんとの出逢い。
あたしの課題は「いかに子持ちの主婦との関係を構築するか」という枠を越えて、「この人(女性)との関わりの時間を大切にしたい」と思うようになった。
商品が売れるかとかエステの予約が入るかなどは、どうでもよくなっていた、というのが素直なところだった。
約5年、あたしはYさんのお宅を訪問し続けた。 その3年目の時あたりだろうか。 あたしはYさんに「Yさん、美容の勉強してみない?」と軽い気持ちで言った。 何度かタイミングがあれば同じ言葉を言った。 そのうち、「私にも本当にできるでしょうか?」とYさんが歩み寄ってきた。 「何事も勉強ですよ。教養です。」とあたしが抱いてきた気持ちを伝え、Yさんも美容を学んだ。
今では、YさんはYさんのペースで顧客との対話を楽しみ美容アドバイザーとして活動している。 そして、Yさんの娘さんはこの春、中学校に進学した。
あたしが転勤族であり拠点が移ろっても、実年齢は年下ながら、先輩として慕ってくださっていることに感謝。
教養として関わった「美容」という領域であるが、Yさん以外にも顧客である個人と繋がり続けていることで、思いがけない縁が深まることが起こる。
「うちの子、発達障がいなんです」
美容部員とその顧客関係から、共に発達について、子どもの支援について学ぶ関係に発展。
ただこうやって繋がり続けること、ただこうやって存在し続けること。 それだけで人間関係は奥行きが出てくる。
あたしの人生、あたしらしく紡いでいけているな、と今日思えたことが幸せである。
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明日は、小学校で特別支援教育支援員の「試験」を受けることになった。 書類選考は通過したのだ。
大胆に応募の動機や自己アピールを書いたのだが、それを理解してもらえたのかは今後の私の行動にかかっている。
適度な緊張感を持って、しなやかにしたたかにおおらかに「試験」に挑む。 あたしの武器(?)「笑顔」を忘れないようにしなくては。
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