EscapE
柚樹



 地面すれすれの空中を漂っている風船の気分。

バイト先のみんなで新年会と称した愚痴大会。

学校の都合で30分遅れて参加。

心がしんどい時、悪酔いする可能性は高い。

むしろ100%に近い。

わかっているから控えた。


いつものように絡んでみても

素面な部分が残りすぎてて、乗り切れない。

誰かと喋っていても、心はここに在らず。

煙草の数が見る間に減っていく。

その日、開けたばかりの箱のなかに残ったのは、たったの6本。

3時間足らずの間に。


盛り上がる周囲に羨望を抱きながら

気にも留めない振りをして、ひとり煙草に火をつける。

そんな自分を眺める、もうひとりのあたし。


ただ静かに語り合いたい。

そんな気分も、居酒屋特有の喧騒にまぎれて

あたしは居場所を失う。

ひとり、違う世界に投げ出され、行く宛も知れずただ戸惑うばかり。

声にならない叫びをあげて、ひたすらに足掻いてみても

そんなことじゃ元の世界に戻れない。


友達の家に泊めてもらう約束をキャンセル。

2次会カラオケ、もちろんオール。

ひたすらに歌ってみた。

周りの状況なんか、これっぽっちも考えず。

このメンバーだからできること。

あたしのわがままで振り回してるってことは

この際、気付かない振りをさせてもらう。



何も考えず、ただ泣きたいときに泣けたなら……。



2005年01月14日(金)
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