水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2002年02月27日(水) |
加納朋子著『ななつのこ』 2〜7 |
一気にラストまで読んでしまいました。
身近にあったちょっとした事件を手紙にして佐伯綾乃に送る駒子と、手紙に 書いてある事実だけから、その事件の実像を解き明かしてくれる返信。 短編ひとつずつに、綾乃が書いた物語と駒子が出会った謎の事件が織り重なって 不思議な厚みを見せてくれました。
瀬尾さんとの出会い、返信の秘密など六話までのできごとが、最後の第七話で 結びあいます。花びらが集まって、一輪のきれいな花になりました。
お話を簡単に紹介しましょう。
第二話『モヤイの鼠』 友達のたまちゃんと渋谷の画廊へ個展を見に行った駒子。 後でもう一度見に行くと、変わっていることが!?
第三話『一枚の写真』 駒子のアルバムから無くなっていた一枚の写真が届きます。 差出人は、小学校時代のクラスメイトでした。今頃、なぜ?
第四話『バス・ストップで』 バス停でバスを待つ駒子は、奇妙なおばあさんを見かけます。 おばあさんがしていたことは?
第五話『一万二千年後のヴェガ』 デパートの屋上にあったビニール製の恐竜が盗まれ、発見された場所が 幼稚園の庭。誰が、どうやって?
第六話『白いタンポポ』 小学校のサマーキャンプにボランティアとして参加した駒子は、真雪ちゃんと 出会います。タンポポの絵を白く塗る真雪ちゃんとは?
第七話『ななつのこ』 真雪ちゃんが姿を消した。どこへ? そして、すべてがここにつながるのです。
特に良かったのは『一万二千年後のヴェガ』でした。
駒子が綾乃への手紙に書いたように、謎はいつも近くにあり、ただそれに 気づくことを忘れているのかもしれません。 綾乃の返信にあるように、ものを見る方向をいつのまにか決めてしまっている のかもしれません。
開かないドアは、[押す]じゃなくて、[引く]なのかもしれません。 行き止まりは、案外、横に出口があるのかもしれません。 なんだか、とりとめのない感想になってしまいました。
わたしの好きな詩人、八木重吉の詩に、こんな素敵な詩があります。
『もくもくと 雲のやうに ふるえていたい』
なぜ?と思うのは、こころをふるわせようとしていること。 そのなぜに、答えてくれる人がいるのは、幸せだと思います。
加納朋子著『ななつのこ』(創元推理文庫)
ありがとう。
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