水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2002年03月20日(水) |
北方謙三著『彼女の時』 |
恋について語れるほど、恋をしたわけじゃない。 なんて、こんな書き出し、まったく陳腐で情けない。
恋は読むものじゃなくて、するものだよ。 こう言われたら、返す言葉が見つからない。
恋をしてますかと訊かれたら、しているようなしてないような、歯切れの悪い 会話になってしまうでしょう。
恋愛小説は好きです。 もう大好き。これは間違いないです。 別れの場面が特に好き。別れがどんなものかで、ふたりの関係も決まります。
そして、別れる女を見送る男の悲しみを覗くと、きゅんと切なくなります。 女とトラブルなしに別れられた、うまくやったじゃないか、なんて呟きながら、 それでも男は傷ついている。もう、会わない方がいいわ、なんてピシャリと終り を宣告するのは、女。したたかにできています。
若い女に自分の知識を教え込み、自分好みに作り上げていく男がいます。 そんなのは、傲慢でいやらしいだけでしょうか・・それもひとつの恋のかたち なのではないでしょうか。育てた女が他の男と結婚することになったとき、男 の胸にあるものは、恋の終りを知った少年と変わらないのではないでしょうか。
『贅沢な恋愛』(角川文庫)第三話『彼女の時』。 プラチナのブレスレット・ウォッチが刻む時間は、しっとりと過ぎていきます。 北方謙三が描く恋のお話、中年男の哀愁が品良くまとまりました。 プラチナ・マジックですね。そして、男は荒野に立っています。
意外にいい余韻。じゃ、また明日!
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