水野の図書室
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2002年04月12日(金) 北村薫著『かすかに痛い』

短編集「水に眠る」(文春文庫)の第十話、最後のお話になりました。
これもひとつの愛の形ですか? 同じ職場の男女が人目をしのんで旅行します。
不倫ではなくて、会社で噂になるのが嫌だからという理由で、ふたりの仲は秘密。

読み終えた時、失礼ながら、この作品はこの短編集には余計だったのではないか
と思いました。昨日読んだ『ものがたり』の印象が強すぎて、『ものがたり』の
ラストをこの短編集のラストにした方が良いのではと、正直、思ったのです。

ところが、この日記エディタに向かって、『かすかに痛い』を思い返してみると
やはり、第十話、最後のお話として読んで良かったという思いに変わりました。

それは、例えば映画のスタッフロールのようなもの。メイキングシーンを通して
名場面を振り返るような優しさで心にしみわたります。

『恋愛小説』『水に眠る』『植物採集』『くらげ』『かとりせんこうはなび』
『矢が三つ』『はるか』『弟』『ものがたり』そして『かすかに痛い』。
どれもがこの短編集に、なくてはならない大切なピースです。

『かすかに痛い』の解説、澤木喬氏の率直な感想には好感を持ちました。
総論として、コラムニストの水星今日子氏も素敵な解説を寄せています。
本当に贅沢な解説です。短編同様、読み応えがありました。



じゃ、また明日!




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