水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
| 2002年09月14日(土) |
吉行淳之介『手品師』 |
せつなさをキーワードにした短編集「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)の 第一話です。せつない話といったら、山田詠美の『天国の右の手』(「贅沢な恋 愛」収録・角川文庫/2002.4.13記)が私的には一番なので、「山田詠美編」にまず 惹かれました。あれほどせつないお話を書く山田詠美が選んだ日本と欧米の14編。 しばらくの間、極上のせつなさに浸れるでしょうか。
手品師・・これが、マジシャンだと違った印象になりますねー。 うーむ、タイトルからもせつなさが香ります。 少年が、酒場で働く少女に手品を見せるお話。命懸の手品の裏にあるものは……。 その手品に立ち会うことになった倉田が偶然知った少女の秘密は……。
倉田の最後の呟きが、巧く効いています。 真面目な少年を見つめる世慣れた小説家・倉田には大きな存在感があります。 誰もがくぐりぬける場所があり、過ぎてしまえばなつかしい時期なのですね。 (ほら、あの頃は若かったね〜って、思い出すことあるでしょ?)
せつないという感情は、心の成長の過程で芽をだしてくるものなのかもしれません。
せつなさ:☆☆☆
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