水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年02月06日(日) 篠田節子『柔らかい手』

ヒェ〜〜こ、怖いよー!妻の愛はホラーの匂い!

水の事故で全身不随となった写真家を世話する妻のお話なんですが、客観的に
見たら、献身的でよくできた妻でも、寝たきりの夫にとっては、自由を奪われ、
外部との連絡もさせてもらえず、まるで、、、生き地獄のよう。。

うーむ、この妻は夫に憎しみを抱いている模様です。それは、写真家として、
あちこち撮影に出かけることの多い夫が、家にあまりいなかったからですか?

写真家って、そういうものなのでは?家にいつもいる写真家なんて、スケールが
小さいと思うんですが……。身体の自由がきかなくなった夫と、ずっと一緒に
いられるのを喜ぶ妻は、、、心のバランスを崩してませんか?病気スレスレの
女を描くのが上手い篠田節子のおかげで、怖いながらもズンズン読めますよ。

ラストにきても、ラストじゃないもどかしさは、主人公に明日があっても明日が
ないからで、不思議な感覚です。愛が憎しみに変わり、終わりがない苦しみで
思い出すのは、『38階の黄泉の国』(「短編復活」集英社文庫、2002.12.02記)。
こちらも篠田節子のホラー愛が、心の奥にゆっくり沈んでいきます。


水野はるか |MAIL
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