水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年10月02日(日) 山田詠美『姫君』

表題作『姫君』、あとから、ほんわりきました。良かったですよ。

これもひとつの純愛ですか?高慢で女王様気取りの姫子と、定食屋で
働くまじめな摩周のお話です。ふたりの出会いは、食堂街の路地裏。
ゴミバケツを開けていたホームレスの姫子を摩周が連れて帰ったこと
からふたりの暮らしは始まります。

傍若無人な姫子の態度に摩周は腹を立てることもなく、それどころか、
痛めつけられるほどに嬉しそうな摩周。。。いじめ役といじめられ役に
徹するふたりは、恋人たちには見えなくても、もっと深いところで、強い
絆で結ばれていきます。そして、ラストは出会い以上に……。

支配しているようで、実は、支配されている関係に気づくとき、いろんな
ものが見えてくるのかもしれないですね。愛とか恋とかだけじゃなくて。

朧月夜の出会いから、季節はめぐり、再び春へ。さりげない描写の中に
暑さ寒さが自然に感じられて、ふたりの1年をそっと見守った感じです。


支配といえば、以前書いたような気もしますが、「別荘と愛人は大変だ」
と、誰かの本で読んだことがありました。支配しているつもりが、逆に
支配されてしまう。所有物に振り回されることになるということらしいです。
お持ちの方は、ご用心!


水野はるか |MAIL
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