Opportunity knocks
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2006年12月31日(日) 今年も終わり

簡単に今年の総括。


今年読んだ本ベスト

「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ

読んだあと思わず視線がさまよってしまうそんな小説。この人の文章が好きだって、今回読んではっきりわかった。


「マイ・ロスト・シティ」 スコット・F・ジェラルド

今更フィッツジェラルド?と自分でも思いながらも夢中になって読んだ。
ある日突然襟首を掴まれるような読書体験、なるほどと思った。


「半島を出よ」  村上龍

最初から最後まで緊張感が途切れなかった。素晴らしかった。


「雪沼とその周辺」  堀江敏幸

抑制がきいている文章というのは、その背後にある何かを否応無く喚起させるということに繋がると思う。一つのものを提示しながら同時に百のものを想像させるこの人の文章にかなり引かれている。


「エンペラー・オブ・ジ・エア」 イーサン・ケイニン

どの短編もそれぞれ深い味わいがあって甲乙つけがたいのだけど、強いていえば「音階の記憶」「頭の中で何かがかちんと鳴る」が好き。
「夜空の皇帝」は素晴らしすぎ。「夜の旅人」はかなしくて、「スター・フード」はせつない。「私たちの家」はやりきれなくて、「カーニバルの犬またはダイヤモンドを買う男」は読みながら何かがむずむずした。
それぞれの短編のタイトルだけをみていてもなんだかイメージがひろがるような気がする。そんな短編ってちょっとない。


「ゆれる」 西川美和

映画の原作となった小説。自分で原作を書き、さらに監督もしてしまうというその才能には感嘆の一言。映画も素晴らしかったけど、小説はそれ以上に良かった。


「ティンブクトゥ」 ポール・オースター

久しぶりのオースター。犬が語る人間世界。いろんな読み方ができるたのしい小説。


「異国の客」 池澤夏樹

好きなのかまだよくわからないのだけど、文章の雰囲気みたいなものは読んだあと長く残った。またほかのものも機会があれば読んでみようと思う。


「読む力・聴く力」 谷川俊太郎 立花隆 河合隼雄

読む力や聴く力というのはあくまで受動的な行為だと思っていたのだけど、これを読んで考え方が少し変わった気がする。読む力と聴く力、これからも精進して磨きをかけていきたい。


「ダイング・アニマル」 フィリップ・ロス

女のわたしにはよくわからない心理だけど、だからこそ興味深く読んだ。
最後の結末はとても良かった。



今年観た映画ベスト


「硫黄島からの手紙」 クリント・イーストウッド

表層的な史実ではないありのままの現実を教えられた気がする。この映画を日本人より先に撮られてしまった悔しさも少しあり。それでもほんとうに素晴らしい映画だった。イーストウッドはどこまれ大物になれば気がすむんだろう。


「ナイロビの蜂」 フェルナンド・メイレレス 

汚いもの綺麗なものが渾然一体となって世の中は存在するんだな、と漠然と感じた。ざらっとした質感のある映像がずっと頭に残った。


「ゆれる」 西川美和

人間の心理をとことん突き詰めた演技が素晴らしい。自分の本音、意識していない部分を表出する怖さと快感。そういうものを感じさせた監督の手腕と感性にただただ脱帽。


「ホテル・ルワンダ」 テリー・ジョージ

正直にいって、この映画の現実を自分の事の様にして考える事はできないと思う。わたしは人が虫けら同然に殺されるのを見たことがないし、命を脅かすような飢餓を体験したこともない。そういう現実的な距離を実感した。でも、うまくいえないけれど、そういう距離を自覚した上で学べることもあるんだと思う。とにかく見るべき映画だったと思う。


「ブロークバック・マウンテン」 アン・リー

一言でいうと「激しい」映画だった。表面的には静かで淡々としているのだけど、常にはりつめた糸が一本あるような雰囲気をずっと感じた。
激しい感情の行き場をさがしにさがして、それでも結局はそのような気持ちと向き合う事しかできなかった人の心がとてもいとおしくなるような、そんな映画。
原作はシッピング・ニュースのE・アニー・プルー。この人の話っていつも吸引力あるなあ。


「メゾン・ド・ヒミコ」 犬童一心

美しい男がこれでもかとでてくる映画。あと、はじめて柴崎コウが可愛いなとおもった。


「アマデウス」 ミロス・フォアマン

好きな映画を5本あげろと言われたらすぐさま頭に浮かぶ、わたしにとってそんな映画。これで何度観たことだろう。NHKのBSで毎日モーツアルトを聴いていたせいか、またあらたな感慨を持った。サリエリがモーツアルトに抱く憎しみは年をとるにつれて理解が深まっていく気がする。


「かもめ食堂」 荻上直子

将来本屋カフェを開くことができたら、メニューはお握りとコーヒーとシナモンロールにすることにした。最強メニュー。
人の優しさって何だろうと漠然とおもった。


「間宮兄弟」 森田芳光

とてもたのしい映画だった。佐々木蔵之助のファンになった。


「ブロークン・フラワーズ」 ジム・ジャームッシュ

ロードムービーははっきりいって苦手だけど、これは違和感無くみることができた。かっこいい映画だなとおもった。



今年よく聴いたCDベスト


エゴラッピン   「ON THE ROCKS」

レミ街      「フェスタシエスタ」

パリスマッチ   「AFTER SIX」

Flipper's Guitar 「SINGLES」

WES MONTGOMERY 「SO MUCH GUITAR」  



今年は映画も本も音楽もなかなか見たり聴いたりできず、量としてはかなり少なくなってしまったけど、質というか自分にとってこれは必要だと思えるものはだいたい出会えたとおもう。
こんな感じで来年もいろんなものに出会えたらいいなあ。





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