ON LOTUS
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2004年10月16日(土) 読書の秋です

■名香智子「マダム・ジョーカー 4巻」双葉社

お金持ちで美人で屈託のないさっぱりした性格の月光寺蘭子さんと、息子の十蘭、娘の奈蘭の繰り広げる物語。ゴージャスで時にスリリングな日常。なんともクセになる名香節。



■畠中恵『しゃばけ』新潮社

娑婆気とは「現世に執着する心」のこと。

廻船問屋の大店「長崎屋」の一人息子、一太郎は、「薬種問屋」を任された若だんな…だが、めっぽう身体が弱い。
主人公がこんなにひ弱で大丈夫なのかと心配になるほど弱々しい。
たまに店に出ても、疲れるといけないからと、ろくに働かせてもらえない。
かと思えば、気概の方は大したもので見目も麗しい、心優しい十七歳である。物腰はどこまでも柔らかく、礼儀正しい人物でもある。
長崎屋に勤める手代の佐助と仁吉は、実は小さい頃祖父がお守りにとつけてくれた犬神と白沢という妖怪が姿を変えたもの。
何故か、自分たちの身を賭して、一太郎を守ってくれる頼もしい存在でもある。
この妖怪たちも一太郎の両親共々、一太郎を溺愛するという調子。
こっそり家を抜け出して夜歩きしてみれば、人殺しの現場に遭遇して、追いかけてくる犯人から逃げ出さなければならない始末。
お金に不自由はないものの、使い道といったら近所の菓子屋で菓子を買うくらい。少しでも顔色が悪いと見れば、すぐに離れの寝間に追いやられて強引に休養を取らされてしまうは、近所の幼馴染み、栄吉の家まで出歩くのもいい顔をされないは、箱入り息子は箱入り息子で大変そうである。
離れには同居人であるところの妖怪たちが棲みついていて、そんな若だんなの話し相手になったり、時には手助けをしたり、菓子を食べながらお茶を飲んだり。
妖怪とのんびりお茶を飲んでなごむ。なんとも愛嬌があってほんわかしている。
その一方で、以前に目撃した人殺しは、江戸の町を震撼させる連続殺人事件に発展し、犯人はどうやら一太郎に的を絞っているらしいことが分かり…。
部屋に現れる妖怪たちを手足に(なにしろ身体が弱いので)、妖しがらみの事件を解きほぐす、人情推理帖。
軽妙な文章で、一気に読み進めてしまう物語。



■船越百恵『眼球蒐集家』光文社

タイトルと表紙のイラストに惹かれて購入。
船越百恵という作家のデビュー作らしい。
ドジな新米刑事、香月七海(かづきななみ)と、頭は良いけど変人(美形?)なプロファイラー美咲嶺(みさきれい)を綴った物語。
第一の殺人事件の被害者は、目玉をくり抜かれて吊され…
第二の殺人事件の被害者は、両目をくり抜かれていたうえに、宿していた胎児を引きずり出され…
なんとなく、おどろおどろしいというか、ホラー路線の物語なのかと思って読み始めた。
もしかしてミステリなのかなと、途中で思った。
プロファイリングの根拠も、ちょっと薄い感じがする…気がする。
それから、京極夏彦の影響らしきものが、読んでいてやや気になる。
視点がころころ変わるのも、ちょっと惜しい感じがする。
それでも、主人公のキャラが立っているのと、軽妙な文章のおかげで最後まで読めた。
同人誌ならこれでもいいかな、という感じ…うあー、偉そうですみません…。
もうちょっと書けるんじゃないかなあという予感も感じさせるので、シリーズ化されそうなこの作品の今後に期待したいところ。


たけやん |MAILHomePage

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