「ちっくんちゅる、ちっくんちゅるのーー」という娘の台詞を引き出すために、三度のごはんのたびに彼女を脅迫している。 「ちっくんしないのね?じゃ、ご飯オカーサンだけ食べちゃうからね?」
これを言わずに済む方法はないものか。お互い気分が悪いじゃないの。
朝っぱらから娘をつかまえて説得する。
ねえ、ビョウインに行ったの覚えている?カンゴフさん優しかったね。
ゆかはぱっちんとちっくんをしないと、ご飯を食べても元気が出ない病気なんだ。病気とは仲良くなったから、先生がいいよって言っておうちに帰ってきたんだよね。
ぱっちんとちっくんすれば、元気でいられるんだけど、しないとくたびれちゃうんだよ。わかる?だからがんばろう?オカーサンとがんばろう?
「ワカッタ」と神妙にうなずく娘。
しかしその後の朝食前の測定も注射も、いつものように嫌がって先延ばし作戦を展開。
結局いつものキメ台詞の登場。これなしでいきたかったのにい。
パンをトマトをきゅうりをハムを食べながら、娘ふとうつむいて小さな声でつぶやいた。
「げんきがでない・・・」
ごごごごめん。わかりづらかったよね。大丈夫だよ、もうちっくんしたから元気出るよ。大丈夫大丈夫。焦りまくるカーサン。
反省。まだ理屈で説得するのは無茶だったか。
なんでもかんでも、とにかく当たり前にしちゃいなさい、かわいそうと思ってはダメ、という主治医U先生の顔が頭をよぎる。
でも嫌がってるんですよ。当然の儀式として定着するには、当分時間もかかるだろうし、カーサン例の脅し文句も続くだろう。
どうしたもんか。こんなことだけど、主治医にメールしてみようかなあ。
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