日々雑感
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2001年12月26日(水) きっと、いつかこの風景を

今日はほんとによく晴れた。冬ならではの澄んだ薄い青空。空気も風も冷たい。まだ明るいうちから薄い月がビルの間に見えていたが、日が暮れるにつれて輪郭もはっきりしてきて、ぼんやりと光り始めた。暮れてゆく街の上に、そこだけ異質な存在感をもって月が浮かんでいる。

それを眺めながら、私はきっとこの風景をずっと覚えているだろうと思った。ある風景に対して突然そのような感覚を持つことがある。例えば、窓から差し込んだ夕日に染まる小学校の廊下。月見草やハマエンドウの咲く夏の終わりの浜辺。陸橋から見下ろす線路と行き交う電車。いつかきっと、自分はこの風景をなつかしく思い出すだろう。この場面だけ、はっきりと、鮮やかに浮かんでくるだろう。根拠も何もない、けれど強い確信である。そして実際に、そうした風景の断片がいくつも自分の中にある。

生きていくというのは、いろんな風景を抱えていくことかもしれないと思う。いろんな風景が見たい。すべてが自分の中に残るわけでなくとも。

友人と、久しぶりに髪を切りに行く。数ヶ月に一度、いっしょに美容院へ行き、そのあと飲んで帰るというのが恒例なのだ。お店では美容師さんたちが昨日までのクリスマスの飾りを片づけている。リースもツリーの飾りも大きな袋にしまわれてゆく。ふたりとも切り終わり、「よいお年を」と見送られて外へ出ると、襟足に風が冷たい。寒い。寒いけど、お店に入って、一杯目はビール。


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