日々雑感
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2002年01月15日(火) 春の陽気とアンデス山脈

よく晴れて暖かい日。1月だとは思えない。数日前まで雪の中にいたのが嘘みたいだ。まるで春みたいな陽気の中を歩きながら、地元では今頃雪が降ってるのだろうか、ストーブの前から動けないのだろうかと考える。同じ地球の上で同じ時間を過ごしていながら、まるで違う環境や気候がいくつも同時に存在しているのだ。

何年か前に南米に行ったことがある。シアトル、マイアミと二回乗り換えをして、ちょうど夜が明ける頃にアンデス山脈の上空を通りかかった。目が覚めて窓の外を眺めると、明けかけた青い光の中にアンデス山脈が浮かび上がっている。ひたすらに連なる山並み。頂上のほうから細い流れがいくつも筋をつくっているのが見える(雪どけ水の流れなのか)。街も灯りも何も、人間の気配は皆無である。気配どころか、そこに立ち入ることを拒むような圧倒的な厳しさ。目が離せなかった。あまりにも美しくて恐ろしい光景。低く唸る飛行機のエンジン音だけが聞こえる。

こうしてアンデス山脈の上空を飛んでいる自分がいる。そのとき、日本では皆が食事の用意をしたり、ラッシュの通勤電車に乗ったりしているのだ。この音のないアンデス山脈と、東京のざわめきと、けれどもそれは同じ時間に、同じようにこの世界の中にある。そのことがうまくイメージできなくて、実感がわかなくて、くらくらした。

今、自分がいるこの場所や目にしているものだけがすべてではない。むしろ見えていない部分のほうが、広く、深いのだろう。ときどきそのことを考える。地球の裏側に確かに広がっている、あの光景を思い出す。


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