日々雑感
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2002年01月14日(月) 偏愛の書

新大久保のスタジオで練習。もう何十回も通っている場所なのに道に迷う。ぼうっと歩いていたせいか。一本違う通りに入っただけで風景がまるで違って、一瞬どこにいるのか全然わからなくなった。迷子の気分を久々に思い出す。

今年初演奏。2週間後に演奏会があるのだが、調子はまだ七分目といったところ。練習は本番当日を入れてあと二回ということで「8月30日の気分だね」と皆で言い合う。練習後は焼き鳥屋でささやかな新年会。「ささやかに」のつもりだったが、日本酒がおいしくて何杯かおかわり。いい気分になる。

連休最終日のせいか、電車もそんなに混んでいない。駅から地上に出てブックオフに寄る。100円コーナーで『星の牧場』庄野英二(角川文庫)を発見。

この『星の牧場』は自分の偏愛の書である。何か一冊だけ手元に残せと言われたらきっとこの本を選ぶ。そんなこともあって、古本屋の本棚などで見かけると「誰が手放したんだ」と憤慨したり、「救出しなければ」と思ったりして、つい買ってしまうのだ。もう何冊も持っているのに。

けれど、いちばん強いのは「この本がなくなってしまったらどうしよう」という思いかもしれない。どんなときでもこの本があればいい。これを読むだけで、何か大事なものを見失わずにいられる。暗闇の中の航海を導いてくれる灯台のようなもの。その光がなくなってしまったら、私はきっと暗がりの真ん中に放り出されたまま途方に暮れてしまうだろう。そうなるのが怖くて、見かけるたび、冬を越す食糧を蓄える動物みたいに買い込んでしまうのだと思う。

今日も、迷ったすえに購入。備えは万端。よっぽどのことがない限り大丈夫だろう。


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