日々雑感
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2002年01月13日(日) 夕日を見る猫

本を読んでいたら、夕日を眺めるチンパンジーの話がでてきた。

「京大霊長類研究所の鈴木晃氏が、タンザニア西部で夕日を眺めるチンパンジーを見たと報告している。若い雄のチンパンジーが、川辺の林のひときわ高い樹の頂近くまで登って、山の彼方に沈んでゆく夕日を、ひとりだけでじっといつまでも見つめていたという。」『遥かなるものの呼ぶ声』日野啓三(中公文庫)

これを読んで、夕日を眺める猫を思い出した。友人から聞いた話だ。友人の家の裏には田んぼがある。毎日、夕方になると一匹の黒猫が田んぼの際の同じ場所にやってきては、夕日が沈んでゆくのをじっと眺めているのだという。そして、日が沈み、暗くなると立ち上がってどこかへ帰ってゆく。そのあいだ、視線を夕日に向けたままじっとして動かない。次の日も次の日も、晴れた日には必ずやってくる。

話を聞いて、様子を見にいったことがある。たしかに田んぼの際に小さな黒い影がぽつんとあって、日が沈む方向を向いている。きれいな夕焼けの日だった。(その後、春になって田んぼに水がはられると、いつの間にか来なくなったらしい。)

夕日が沈もうとしているところを見かけると、つい立ち止まる。条件反射のようにして見入ってしまう。そこにあるのは、私的な感情を越えた、何かもっと大きな力だと思う。チンパンジーも、猫も、人間も、そのとき同じ思いで、等しく生命として、夕日の前に立ち止まっているのかもしれない。


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