大きなリュックを背負って、友人がやって来た。国境をいくつも越える旅の途中。ふたりして落葉に埋もれた川ぞいの道を歩き、ひたすら細い石畳の路地をめぐり、夜には小さな店でビールを飲んだ。テーブルの上には蝋燭がひとつ。その灯りを見ながら、ギリシャやイギリスやポルトガルの話を聞いた。翌朝、次の街へと向かう友人を中央駅まで送りに行く。見送られるのは苦手だけれども、見送るのは好きだ。線路の向こうに小さくなる汽車を見送っての帰り道、時刻を告げる教会の鐘の音が聞こえてくる。鐘の音、遠くまで響け。