日々雑感
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2003年12月08日(月) 夜空の下

寒い夜の満月は一際明るい。地上におけるすべてのものを照らし出すかの如く。バスの中から、その月を眺める。珍しく空いた車内には、エンジン音だけ響いている。

この月が照らしているであろう、いろいろな風景を思いながら、ふと、夜間飛行のときの眺めを思い出す。例えばロシア上空。圧倒的な暗闇の中、ぽつぽつと灯りが固まっている。あれが、人のいるところだ。闇に呑み込まれないように、寄り添い、灯りをともして暮らしているのだ。あるいはマイアミ。くらくらするような灯りの洪水だったけれども、しばらくすれば、もう何も見えなくなる。カリブ海。島のかたちの灯り。その灯りを目指して飛行機は飛んでゆく。

自分が今いるところの、何という頼りなさ(月の明るさの分だけ、本来あるはずの暗闇が目の前に差し出されたような気がしたのか)。自分たちのたてた物音まで吸い込まれそうな砂漠の夜。その中で火をおこし、皆で肩寄せ合って周りを囲んでいるようなものかもしれない。けれども、心細さの反面、周りに誰かがいる、それだけでひどく安心するのも確かである。

静かだ。

バスは川沿いを走る。水面に映った月が揺れている。


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