日々雑感
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南チロルはボルツァーノへ。ドイツ語名はボーツェン。インスブルックに住む友人を訪ねていたのだが、そこから電車で2時間ほどだというので遠征することに。乗り込んだ電車の名前は「ミケランジェロ号」、終着駅はローマである。
ブレンナー峠を越えたところで、車掌がオーストリアの人からイタリアの人へと代わる。南チロルはドイツ系とイタリア系が混ざり合いながら暮らしている場所ということもあり、車内アナウンスも駅名標示もすべてイタリア語とドイツ語の両方で行われている。街の中も然り。お昼を食べた食堂の人はドイツ語。屋外でコーヒーを飲みつつ大きな声で何かを喋りあっているおじさん三人組はイタリア語。そしてどちらも、自分たちの言葉が分からないと見ると、こちらに合わせて、すぐもう一方に切り換える。
言葉も人びとも混じり合う場所。混血のバランス故か、南チロルは美男美女が多く、特に「黒髪に緑の瞳」という特別な美形が現れることで有名らしい。一方で、必要に迫られて二つの言葉を使いながらも、イタリア系とドイツ系の間では依然として、ほんとうに親しくは交わらないような壁が存在するという。
通りがかりの者には見えにくい、ある燻るものを抱えつつ、背の高い柱廊に縁取られたイタリア風の広場や、淡い黄色や緑色の家々が整然と並ぶドイツ語圏風の路地とが並び合って、街並はあくまで美しい。それに、街をぐるりと囲む山々。アルプスから流れてくるのであろう、澄んでいかにも冷たそうな川の流れ。桜咲く中をぶらぶらと歩き、広場に面したカフェにてカプチーノを飲んだ。
帰りの電車、再びの峠越えのあと、国境検査の警官が乗り込んでくる。パスポートを取り出し、表紙を見せたところで「ヤーパン、オーケー」。中を開きもしなかった。日本のパスポートの威力を今回も思い知る。さながら水戸黄門の印籠。
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