小学生の頃、夏が近づくと 「コーカガクスモッグチュウイホウです。レクリエーションの時間は教室で遊びましょう」 と校内アナウンスが出たり、体育の授業が中止になる事がよくあった。 よく解らないながらも「非日常」的な展開にわくわくした。 「コーカガクスモッグ」というのは幼稚園の頃お遊戯の時間に着たスモックのようなものだろうかと不思議になった。
その後少し賢くなった。 「コーカガクスモッグ」というのはとうやら有毒ガスのようなものらしい。 でも外で遊ぶのと教室で遊ぶのと、何が違うんだろう、どうせ空気は繋がってるんだから被害は同じじゃないか。なら外で遊んだっていいはずだ! 外で遊ぶのが好きでも無いのに、いつも無理矢理教室から追い出される生徒だったのに、外で遊んではイケナイとなると妙に外で遊びたくなるから不思議である。 屁理屈好きな子供だった。
その後センセイから、工場からのタイキオセンで暑いとコーカガクスモッグが起こるんだと教えられた。 タイキオセンなら私だって知ってる。それって一日だけ有毒になるんじゃないもんね。ずっと空気が汚れたまんまなんだもんね。知ってるもん。なのに暑い日だけタイキオセンなんて、そんなの変だ。説明になってない。センセイも本当はコーカガクスモッグがどういうものかなんて解ってないんじゃないの? 小生意気な子供だった。
も少し賢くなって「コウカガクスモッグ」が「光化学スモッグ」だと知り、実体はNOxが原因で起こる光エネルギー反応による有毒物質濃度の上昇現象である云々、という事も知った。UVによって分子の反応が励起される仕組みも知った。 その頃にはすでに「光化学スモッグ」注意報は出なくなっていた。 いやたまには出ていたのかもしれないが、全く騒がれることもなくひっそりと注意して終わっていたようだ。
汚れすぎて光化学スモッグを通り過ぎてしまったんじゃないかと思っていた。酸性雨。濃度が高いのでうまいこと水分と結合して雨の度に浄化されているのかな、と。
本日。出た。
思い出の「コーカガクスモッグ」である。しかも注意報をすっ飛ばして「ケイホウ」とは、なかなかやるな。さすが伊達に汚染が進んでいる訳ではない! そして相変わらず、ホンの少しだけわくわくした。もう不思議なものでも何でもなくなっているのに、三つ子の魂とはよく言ったものだ。
別に喉が痛くなるのが嬉しい訳ではないけれど、子供の頃の思い出の風景が光化学スモッグだなんて貧しい環境だなあ、とも思うけれど。 それでも「コーカガクスモッグ」は確かに子供の頃を思い出すアイテムなのだった。
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