幼少の頃、一度引っ越しをした。
ふと以前の家の間取りを思い起こしてみる。
玄関の右手が庭で、左手には確か水道があった。庭はブロック塀で囲まれていて、隅には柿の木。 玄関を入ると斜め右前あたりに階段。階段は勾配が急で、上の方がぐるっと、確か180°曲がっていたような気がする。 庭に面して居間があった。居間にはガラス戸付き書棚や足が四本あるテレビが置いてあり、テレビの下にはよく読む私の本が山積み。 奥が台所。台所には白いレンジや冷蔵庫、食器棚が大小2つ。どこかに玉簾が掛かっていたような気がする。居間と台所の境かな? 他にも部屋があったような気がするが、記憶がぼやけていて分からない。 二階には階段を上がってすぐの所に小さな流しがあった。上がって左手が寝るときの部屋。確か二間続きで、ベランダに出る窓と裏手の窓があったような気がする。ベランダには黄色と緑のインコのいる篭が下がっていた。 階段右手が叔母の部屋。叔母の部屋には足踏みミシンがあった。
笑えるのは、トイレやお風呂場の位置を全然覚えていないこと。興味無かったのかな。 確かあったはずの父の仕事部屋も、遊びに関係が無かった所為だろう。覚えていない。
本の位置はしっかりはっきりと記憶している。二階の寝る部屋にも小さな棚があり、そこには眠る時の読み聞かせ用の本が置いてあった。
台所は、食べ物に関係するものだけはっきり覚えている。レンジの上には弟用の粉ミルクの缶が置いてあった。昔、母が留守の時、泣いている弟にミルクを飲ませようと哺乳瓶に粉ミルクと水を入れ、飲ませようとしたらますます泣かれて困った挙げ句に一緒に泣いている所を、留守を預かっていた叔母に見つけられた事があった。 惜しかったね、小さいときの私。お湯で溶いていたら完璧だったよ。
庭は、食べられる柿の木以外の記憶が殆ど無い。どうやら庭では全然遊ばなかったと思われる。
昔の家を思い出す時一番最初に目に浮かぶのは、階段と玄関。 階段は、急勾配の直線部分で3度ばかり墜落しているのでその所為だろう。生爪を剥がしたり、結構な怪我を何度もした。恐怖は記憶を鮮明にするという事か。 玄関は、洪水で何度か床下浸水した記憶があるせいかな。一家総出で一階の家具を全て二階に上げ浸水に備えた。子供だったので水位が上がって来るのをわくわくして見ていた。結局玄関止まりで床上浸水する事はなく、がっかりしたのだった。不幸が起こらない事に失望するとは、今思えば酷い子供だったものだ。
昔の光景を思い起こすのは、幼い頃の自分の興味がどこにあったのかが判って面白いものである。原点かな。 今あの家はどうなっているのだろう。
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