月の輪通信 日々の想い
目次過去未来


2003年11月16日(日) ドングリ銀行

地域の清掃ボランティアハイキングに参加。市内のあちこちにあるハイキングコースを、住民
が自治会単位でぞろぞろとゴミ拾いをしながら歩く。

いつも季候の良いこの時期に行われていて、我が家はここ数年毎年参加している。

3年前はアプコはおんぶ紐で担がれて、参加した。

2年前はベビーカーで、そして去年は途中アユコにおんぶしてもらったりしながらも、アプコも自
力でゴールした。

今年は、アプコも皆と一緒におしゃべりしながら、おんぶもなしでゴールイン。

帰りにアスレチックで遊んで帰る余力もあって、「体力がついたなぁ。」と感心する。

一方、日頃運動不足のオカアチャンはというと、アスレチックに向かう急な斜面に来ると、膝が
がくがく。

「年齢とともに衰える」と言うことの残酷さを実感。

いかんいかん、「明るい老後」のために、もっと足腰を鍛えて置かなくては・・・。



今回のハイキングでは、ゴールで食べるおでんの他にもう一つお楽しみがあった。

「ドングリ銀行」

子ども達が自分で拾ったドングリを、「ドングリ銀行」に預けて、翌年その預金額に応じて、植樹
用の苗木をプレゼントしてもらえるという緑化運動のイベントなのだそうだ。ゴール地点には、
そのドングリ銀行の臨時窓口が出来るというので、アユコとゲンは一月も前から箱いっぱいの
ドングリを集めて、楽しみにしていた。

たかがドングリとはいえ、ずっしり重いドングリ荷物をゲンがリュックに詰めこんで、歩いた。



「わ、ホントの通帳みたい!」

家から持ってきたドングリを窓口へ持っていくと、子ども達はかわいらしい「ドングリ通帳」をもら
ってきた。

仕様は、銀行の通帳そっくりに出来ていて、預け入れの欄には「300ドングリ」と記入されては
んこまで押してある。

持ってきたドングリを半分づつ、二人分の通帳にいれてもらったアユコとゲンは、いま預けたば
かりなのに、「もっと貯金してくる!」と、その場でドングリ拾いを始めた。

見ると、他の子ども連れ家族もあちこちでドングリ集めを始めている。

「ドングリ銀行」臨時窓口は長蛇の列の大盛況だった。

 

秋になるとたいがい、小さい子供らのポケットからはドングリが出てくる。

帽子つきドングリや枝付きドングリ、ふとっちょのクヌギのドングリなどは、中でも貴重品で、道
ばたに転がっているのを見かけると、手にとって眺めてみないではいられないようだ。

「ドングリの背比べ」というけれど、実際には小さなものから大きなものまで、形も大きさも様々
で、ひとつ拾い上げると、もう一つとつぎつぎに拾いあげる事になってしまう。

たくさん拾ってからといって、焼いて食べられると言う訳でもない。

コマを作っても、やしろべーを作っても、穴をあけて糸を通しても、それほどたくさん要るもので
もない。

なのになぜ子どもはドングリを拾うのだろう。

子どもばかりではない。

大人だって、拾い始めると結構熱中して、ポケットの宝物を増やしてしまう。

つやつやした輝きととろんとした丸み。

手に心地よい重さ、形の面白さ。

「集めたい」という欲求を、妖しく引き出す自然の造形。



「みんな守銭奴みたいやね。」

にわかに始まった、熱心なドングリ拾いを見て誰かがいった。

「これがぜ〜んぶお金だったらね・・・。」

「大儲けだねぇ。」

本当は一銭の勝ちもないドングリも、ドングリ銀行のドングリ貨幣と言われると、集める熱意も
ちょっと違う。

大きな袋一杯のドングリを掲げて、

「大金持ちやぁ!」

と歓声を揚げる中学生もいて、面白い。

「あんたなぁ、それ、全部苗木に交換したら、どこへ植えるつもり?」

と女の子に指摘されて、ぐぅとへこんでしまったのでおかしかった。

「そや、学校にうえて、休み時間に水やりすればええわ。」

あとで、ぼそぼそと独り言の様につぶやく男の子。

やさしいなぁ。

ドングリ銀行。

緑化運動の意識付けとしては大成功かもしれない。



結局、アユコとゲンは、2冊の通帳にそれぞれ600ドングリづつの貯金を記帳してもらってき
た。

春には、一人3本づつの苗木を払い戻して下さる計算だ。

それこそ、どこへ植えようか。

我が家の周りは、すでに立派な雑木林。



ところで、今の時期、子供らが拾ってくるドングリの半分以上は、しっぽ付き。

柔らかな落ち葉や腐葉土の上に落ち着いて、これから土にしっかり根を下ろそうかというドング
リ達を、にわかゴールドラッシュに魅せられた子ども達がざわざわと揺り起こす。

子ども達に拾われたドングリ達は、心なしか迷惑そうな顔色。

ま、それはそれ。

楽しい秋の収穫だった。






月の輪 |MAILHomePage

My追加