『今日の一言』
因幡うたぎ



 ヒロシマの火・・・朝の黙祷

朝の連続テレビ小説の時間…我輩は黙祷をした。洗面台の前だった。出勤準備中の事、なんとも決まらない場所だったが、それでも、TVのNHK放送から流れてくる鎮魂の鐘の音は、すごく沁みた。首相演説がなんだか空々しく聞こえて来る中で、ああ、今年もこの日になったんだな…などと、思った。今年で57回目のこの日は、忘れてはいけない日だし、日常に紛らわせてはいけない日なんだと思う。現実にあのヒロシマを体験した人達は、すでに70代後半から80代になり、この人達がなくなった後、誰がこの記憶を引き継いでゆけるのか…それは、生きている、戦争経験のない我輩達しかいないのだ。−−けれど、現実では、戦争体験に対して興味を持つ若い世代は少ないのだろうと思う。そして、TVでも生々しい戦争体験を語る特集や、その当時の写真などを取り上げ、深い切り口で問題を定義したり、戦争の恐ろしさ、原爆の悲惨さを伝えようとする意識の高い作品が、見られなくなってきているようにおもう。我輩が、小学生の頃は、夏休みのNHKの朝は、毎日お盆の終戦記念日まで、「戦争を知らない子供達へ」というタイトルの戦争体験をお年寄りに語っていただくコーナーが放送されていた。NHK特集では、現在も生きて苦しんでいる被爆者の姿を克明に描いたり、その当時の再現や、現在解ってきている当時の記録などの映像、証言、写真など科学的な見地で描いていたものも少なくなかった。原爆だけではない。戦争末期の玉砕や、沖縄や、空襲についての特集もとても子供心に恐ろしいまでに克明であったように思う。−−−けれど、現代のプロデューサーは、ヌルイ映像しか作らない。生々しいもの、恐ろしいもの、克明な真実は、敬遠される世の中になってきているからだろうか。それでは、本当の意味で、反戦の意識を育てるような、核の恐ろしさを知り、根絶の必要性を考えさせられるような意識を育てる、そんな作品は作れないと思うのだ。−−考える事をしない、想像力の貧困な人間が増えて、段々と戦争が過去の遺物どころか、ただの歴史の教科書の中の文章でしかなくなってゆく…それが、なんだかやるせない。
毎年夏になると、そんな気持ちで一杯になる。
今年こそは…と思いながら、NHK特集を見ても、酷くガッカリするばかり。民放では全くその手の問題定義的特集は組まれず、ただ、時期物としての戦争ものの映画を流したりするだけ……。やらないよりマシだと言われてしまえばそれまでだが……。
どうか、もう少し意識をして、この夏、60年近く前の現実に起こった悲惨な戦争について、考え、そして知って欲しいなぁ。

■今日は何の日?■

NHK設立(1926年)
マッターホルン北壁に日本人初登頂(1965年)
土井たかこ、衆議院議長に(1993年)

=記念日=

●広島原爆記念日
1945(昭和20)年、8月6日午前8時15分、アメリカのB29「エノラ・ゲイ」が、広島市上空に原子爆弾を投下。市街は全滅、市民14万人が亡くなった。その後、原爆症などで亡くなった人を含めると犠牲者は20〜36万人にものぼる。この日、広島では原爆慰霊祭と世界平和祈念のアピールが宣言され、夜には灯篭流しが行われる。


2002年08月06日(火)
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