ほんのりと幸せを感じながら、masayaにくっついて眠った。
朝。携帯アラームをかけてた筈なのに。
ぜんぜん起きられなかった。 フロントから「朝食の支度ができました」の電話で、ふたりとも目覚める。
おはやう。
おはやう。
ご飯いきますかぁ。
あい。
下の広間に降りると、昨夜と同じ場所に今度は朝ご飯。だし巻とか、お味噌汁とか、干物とか、味付け海苔とか。 普段は朝ご飯なんて食べないんだけど、旅行に来るとなんか食べちゃう。朝からお腹いっぱいになってしまった。
朝食後は最後の温泉。 まだ入るの?あたしたち。 あい。入ります。当たり前です。温泉に来たのですから!
最初に入った岩風呂にも一度ちゃぽんと浸かった。
温泉だねぇ。
温泉はいいねぇ。
満喫したよぉ。
部屋に戻ってチェックアウトの用意をしはじめる。 着替えてお化粧して、荷物をまとめて。
ね、もう少し。
もいちど、あたしは感じたくて。 慌ただしく、慌ただしく、抱き合う。 ほんの数分。だったけど、やっぱりあたしは感じて そして、とっても嬉しかった。
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宿をチェックアウトして、ずぅっと山を下って、途中有名な豪華な旅館を横目で見ながらのドライブ。貧乏なあたしには縁がないのかしら?
いつか泊まってみたひなぁ。
あい。さうですねぇ。
大きい旅館、小さい旅館、保養所、ペンション、民宿。いろんな種類。 いろんなとこ泊まってみたいなぁ。でも、お金かかっちゃう!笑
ねへねへ。良かったね。泊まったとこ。
さうだねぇ。値段のわりにはいいんじゃないかぁ?
景色をみて、お話して、そうこうしてるとあたしが行きたいって言ってた「おもちゃ博物館」に到着した。
博物館の入り口には、たくさんの懐かしいおもちゃが売ってる。あたしは嬉しくて、いろんなものを見たり触ったりしてるうちに、とっても欲しいものをみつけた。大きな人形のついたストラップ。
でも、ブリキのおもちゃ達のショーがはじまると館内放送があったので、急いで2階にあがった。ブリキの小さなおもちゃたちが、いろんな動きをする。こじんまりしたショーだけど、楽しめた。
館内を一通りみて、もいちどショップに戻る。あたしは欲しかったストラップを握りしめて、ペアを探す。…どこにもない。店員さんに頼んで飾ってあったのを無理矢理売ってもらった。
ねへねへ。これ、写真撮ってね。
と、2体のストラップを並べて、masayaの高級なデヂカメで画像を撮る。あたしを撮る時はテキトーなのに、こういう事をやらせたら、masayaは真剣。なんだかなぁ。 おもちゃ博物館で遊んでいたら、もうお昼時になってしまった。
新幹線が停まる駅にしては小さな駅。 駅前から少し行った場所にイタリアンなファミレス。 あんなに朝ご飯いっぱい食べたのに、結構な量を摂取。 ああ、もう絶対旅行から帰ったら太ってるよ。あたし。
駅前でお土産を調達することにした。 これと行って欲しいものとかもないんだけど。 お土産屋でみつけた一粒200円の梅干しをついついあたしは買ってしまう。
ああ、またそんなもんを。
masayaはそう言って少し呆れた顔。だって、食べたかったんだもの。どんな味がするのか知りたいでしょう?近くのバーガーショップでさっそく食べてみた。普通においしい。でも、200円の価値があるのかは疑問。
彼の携帯で帰りの新幹線の時間を調べる。ああ、今出たばかりだった。 あと1時間。でも、一緒にいられる時間が1時間長くなったと思うと嬉しい。
どうする?
どうしよう。
じゃぁ、うちの近くまで行ってみますか?ちょうどそれくらいには帰って来れると思うよ。
masayaのカッコイイ車の助手席に乗って、あたしは流れる景色を見る。思ったよりも田舎だ。何もない。masayaくんってこんなとこで生活してるのねと、興味深く見る。
彼が今働いている場所。 彼が今暮らしている場所。 飲みに行く店。 レンタルビデオ店。
別に何の意味もなく、時間潰しに連れてってくれたんだろうけど。 あたしはとても嬉しかった。ああ、これから、きっと「定型文」のメールでもあたしはこれで想像することができる。
残りの時間が少ない。 行きとは違う道を通って、駅に引き返す。 彼は運転しながらいろんな事を説明してくれる。 うんうんと頷きながらあたしは聞く。
金券ショップに連れてってもらって、新幹線のチケットを買った。ちょっと淋しい気分。ああ、もう帰らなきゃ。一泊って短いよね。でも、いっぱいいろんなとこ連れてってくれた。 とても楽しかった。
駅のロータリーに車はすぅっと進入する。 別れる時はいっつも淋しい。淋しいけど、仕方ない。
じゃ、ね。
あい。お疲れ様です。
うん。ありがとね。
いへいへ。だういたしまして。
車の中で小さくキスをして、あたしは彼の車から降りた。
あのね。 温泉連れてってくれて、ありがとう。 時間とってくれて、ありがとう。
また、逢える?
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