土曜から夏の先行セールがはじまって、店は忙しい。
早番で午後6時過ぎにはあがれるはずだったが、そんな雰囲気はなく、すこぉし残業してからタイムカードを押した。
近くのレディスショップで少し話して、裏のライバル店へ行くと、そこの店長が泣きながら店から出てきた。なんでもマネージャーと電話でトラブルがあったらしい。現場の言い分と、会社の言い分が違うのはよくあること。 どちらの立場にも立った事があるあたしは、話を聞く。
「じゃぁ、ご飯いこうか。」
結局店が終わる時間まで待つ事になった。 もういちど、自分の店へ帰って、閉店作業を見守る。 まぁまぁの数字があがったので、今日はほぼ満足。
スタッフの子が、急に言う。
「てんちょー、てんちょの携帯が鳴ってますよ。」
確認するとmasayaだった。
なんだろう。土曜日のこんな時間に電話をかけてくることは珍しい。 折り返しでかけてみる。
「こんばんわ。どしたの?」
「はぁ。ヨッパライです。飲んでます。実を言うと今大阪です。」
「えっ?なんで?」
「結婚式なんだよ。帰るつもりだったんだが。新幹線がなくなりました。」
「はぁ。」
「泊めて下さい。」
「良いですよ。じゃぁ終わったら電話でも下さい。」
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店の近くの洋食屋で晩ご飯を食べる。 どこの店も、いろんな不満がある。 館の集客や、天候や、いろんな要因を会社は理解しない。彼らは数字しかみていないから。そんな話をひとしきりした。 午後9時半にラストオーダー。そろそろ帰ろっか。
携帯を見ると、masayaからメールが来てた。
「○○です。どうすれば良いでせふ?」
あたしはレスを返す。
「そっちまで行こうか?」
コンビニに寄っていると、またレスが入った。
「阪急電車。」
そか。電車に乗るのね。じゃぁ、来て貰おう。 最寄り駅まで来て貰うことにして、あたしは一旦家へ帰る。 散らかってるかもしれないし。確認しておかなきゃ。笑
家へ帰ってちょっとだけ片づけて、それから駅まで迎えに行く。 時刻は午後10時半。
へらへらと改札を出てくるmasayaが見える。 スーツ着てるし。七五三みたいだし。 ほぉんと似合わないなぁ。
「じゃんくならーめんが食べたい。」
相変わらずわけがわからない事を言うmasayaはコンビニへフラフラと入っていって、変なカップメンとミネラル麦茶を買ってきた。
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「お邪魔します。」
「あい。どーぞ。」
早速スーツを脱いでくつろぐ気満々のヨッパライだ。 あ。ネクタイはあたしがあげたやつだぁ。 あ。シャツもあたしがあげたやつだぁ。
そゆことを確認するとちょっと嬉しい。
じゃんくならーめんをずるずる食べるmasayaを横目でみながら、あたしは洗濯をする。お風呂にお湯を張る。
「お風呂入りましたよ。」
「今テレビを観ていますので。」
何?格闘系? 滅多にテレビを観ないのでこんなのやってるなんて知らなかった。K-1なの?
「ねへねへ。こういうの観てると無駄に力が入るよね。」
「そうだね。変なとこに力が入ってる気がするね。」
「うん。イイイーーーッてなる。」
メインイベントのボブサップを観て、案外すんなり負けるもんだなぁとか変なところに感心した。アレアレ?もう終わりなの?
「さて、風呂でも入るかー。」
「あい。入ります。」
うちの狭いお風呂場にデカイ人と小さいあたし。 別にふたりで入らなくてもいいのにね。 なんでふたりで入るんだろうね。
もうクセになってるのかもです。
masayaの背中をごしごしする。 大きいなぁといつも思う。 彼の大きさを一番実感するのは、背中を洗ってる時かもしれない。
トウガラシ入浴剤のおかげで、熱いです。
そろそろ上がろう。
時刻は日付も変わって、午前1時前。
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