優しい=青い部屋=あたしとmasayaの日々。

2004年11月19日(金) 切ない気分。#1

半ば強引に行く事を決めた。

12月はクリスマス商戦。仕事を休むことは難しい。先週末にも行く気で連休を取っていたが、直前でダメだと言われたし、来月に入ると彼も忘年会で忙しいだろう。あたしに逢う時間をとってくれるとは思えない。だからどうしても今月中に逢いたかった。

本当は休めるような日程ではない。急に冬のプレセールの日程が前倒しになった。本来なら店長のあたしがいなくてはならない初日。それをおして休日を取るには、仕事を絡めるしかなかった。

万一逢えなくても、あたしはいかなければならない。

どこか近場にホテルを手配しようと思った。見知らぬ土地で、逢えなくて途方に暮れるのは困る。水曜の夜にメールを送った。

「どっちにしても行くので、どこかホテルを取ろうと思います。」

当然、すぐに返事は来ない。
曜日が変わって、木曜日の午前1時前。ちょうど、あたしがお風呂に入ってる間に、彼からのレスが来ていた。

「金曜日なら普通に逢えるよ。」

気付いてすぐに返事をする。

「じゃぁ、普通に行きます。」

マナーモードの携帯が震える。電話だ。

「横須賀か、静岡かに寄ろうと思って。」

「横須賀?遠いよ。」

「そなの?じゃぁ、静岡にする。」

「何時頃静岡なんだ?」

「仕事で行くから、朝かが動くよ。移動するのは夕方だと思う。」

待ち合わせの場所を決める。時間は?どうするの?

「がんばれば8時には着けるかもしれん。」

がんばってくれるの?

「さあ。」

さあ。だって。さあ。って言われちゃった。逢える?逢えるんだろうか。
でもまだ当日まで時間がある。

明日、キャンセルされるかもしれない…。少し心配。そんなことはしないだろうと思うんだけど、そんな心配をしてしまう。

どちらにしても、あたしは金曜日の朝に東に向かう新幹線に乗る。


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木曜日。
午前中。キャンセルメールはない。この時間は仕事してるから。
午後。まだメールは来ない。まだ仕事中だろう。
深夜。この時間帯が一番怖い。

午前2時まで携帯を気にしていたが、キャンセルのメールはなかった。
それでもまだ不安。


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朝、バタバタと用意をし、駅へ急ぐ。
午前10時台の新幹線に乗らなければいけない。

新大阪で、いつものように、雑誌を買い、飲み物を買う。
乗る予定の新幹線が、思ったより混んでいそうだ。
自由席のチケットを指定に変更しようと窓口に並んだが、なかなか進まない。
もう時間がなくて、諦めて自由席車両の長蛇の列に並ぶ。
幸い、窓際に座れた。

隣に座った人が大きな声で独り言を言うサラリーマン。何かと話しかけてくるので、困惑する。雑誌を読んでいると話しかけてくる。コーヒーを飲むと話しかけてくる。
困ったので、寝たふりをしていたら本当に寝てしまった。


以前に1度この駅で降りた事がある。途中下車だったので、駅前でお友達とお茶をしただけだ。せっかくなので、お友達に連絡を取ってみたら、病気で寝てるという。残念だね、逢えないね。逢いたかったのに。

迷いながらバスに乗り、やっとのことで到着。
数時間をそこで過ごし、店長といろんな事を話し、画像を何枚も撮る。
自分の店のスタッフに電話をして、状況を話し、アドバイスし、本社のMDに連絡し商品を調達し、ちゃんとお仕事。きっちりお仕事。

お休みなのにね。頭のなかは、やっぱり仕事でいっぱい。


夕方、在来線に乗って移動する。
知らない駅。知らない土地。
列車のスピードが早い。駅と駅との距離が長い。

逢えるのかどうか、まだあたしは不安だ。
一応、到着時間をメールで伝えておく。

「午後6時半頃になります。」

知らない景色を眺めながら、携帯を手に取る。

「それは早いな。」




返事が来ていた。
どうやら、本当に逢えるらしい。

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待ち合わせ場所の駅に着いた。

以前に車で通りがかった事がある。
ああそう、漁港へ行った時だ。

駅前から少し歩く。時間はたくさんある。
歩いていると、見たことがある風景。
ああ、ここ車で通ったんだ…。
そう思いながら歩く。

午後から降り出した雨は、小降りになっていた。
ビニール傘をさして、歩く。
メイン通り。脇道。
古い商店が多いアーケード。
午後6時過ぎには、すでに店を仕舞いかけている。

テクテクと歩いて、駅前ビルに入ってみたり、アーケードの端までいってみたり。
雨で路面が濡れていて歩き辛い。スニーカーを履いてくればよかったと後悔する。

なぜだか、外国人が多い。
交差点に数人でたむろして立っている。
すれ違う中にも何人もいる。

女子高生の集団。
大阪とはまったく違う。とても短いスカートの下は、半ズボン?
あしもとはプレイボーイのソックスに、何故かキティちゃんの健康サンダル。
…そんな流行なの?

駅前広場に、着ぐるみ族?らしき若い女の子が数人。
金髪、ガングロ、オールインワンのピンクの着ぐるみ。あしもとは、またキティちゃんの健康サンダルだった。初めてみた姿に驚く。
しかも、みんな同じピンクのオールインワン。
…可愛いんだろうか…。

歩き回って足が疲れたので、バーガーショップに入って休憩することにした。
携帯を確認すると、またメールが来ていた。

「まだかかりそうなので、漫画喫茶にでも行っていて下さい。」


ひとりでいると、周りの会話が耳に入ってくる。
女子高生の会話。イントネーションは標準語。
キャバクラでバイトしてるらしい女の子の会話。

「…最低1日1万5千は堅い。良かったら5万。」

得意げにどうやって売上げを伸ばすのかを延々と話している。
どうやら友人をバイトに誘っているみたい。


漫画喫茶なんて、歩き回ってみたけどなかったしな…。
山葡萄スカッシュを飲みながら考える。
駅のこちら側にないとすると、反対側かしら。

タウンページで検索して、駅前の地図を確認すると、反対側に1軒あるようだった。
駅を通り抜けないと。

「すみません、反対側に出たいんですが、どうやっていけばいいですか?」

駅員に聞くと、どうやら通り抜ける事は出来ないらしい。
ずぅっと大回りして、地下道まで歩くしか方法はないらしい。
教えられた通りにテクテクと歩く。
ずぅっと右に行って、歩道橋を上がって降りるとそこに反対に抜ける道路がある。
結構な距離。

反対側は、少し怪しげな飲み屋が多かった。
パチンコ屋、韓国バー、スナック。

「○○市に突入。」

ん?もうわりに近くなのかな?
土地勘がないので、いまひとつわからない。
漫画喫茶も発見したんだけど、入ってすぐに出るのも嫌だったので、そのまま歩いて10時までやってるスーパーに入って待つ事にした。

時刻は午後8時過ぎ。

1階から3階まで見てまわって時間を潰す。
タバコを吸いたいと思ったが、喫煙場所がない。
仕方なく、入り口横の灰皿があるばしょで一服。

「足が痛いなぁ…。」

歩くための靴ではない。
晴れていれば、どこかに座れたのに、座る場所さえもない。
見るものもないので、ぼぉーっと待っていた。

どれくらい待ったんだろう。やっとメールが来た。

「まもなくつきます。」

ああ。ほんとに来てくれたんだ。

どんな顔をして逢えばいい?
きっと普通にこんばんわって言うんだろうけど。
毎回そんなことを考えてしまう。


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思っていた方向と違う方に車を発見した。

一瞬、反対側に停まってくれたが、4車線の道路を渡る事が出来ない。
どうしようと思ってると、結局ぶーんと走り去った。
どうやらUターンしてくれるようだ。

ハザードを着けて停まる車に乗り込む。

「こんばんわー。」

「こんばんわー。お久しぶりです。」

「はい。お久しぶりです。」
なんだ、やっぱり普通だ。
本当はすごく逢いたかったとか言いたいんだけど、そんなことは言えないし、言わない。


「何を食べますか?」

「なんでも。洋か和かと聞かれれば和です。」

「和かー。和ねぇ。ないんだよなぁ…。」

ないなら聞くなよ。笑。
どこでもいいし、なんでもいい。そんなにお腹が空いているわけでもないし。

結局、前回と同じく、深夜の焼き肉になった。





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~*Yuu
エンピツ