2005年07月17日(日) |
往復8時間 Vol.2 |
ホテルの部屋はダブルだけど、とても狭い。 ユニットバスは後から付けたような感じ。
「大浴場があるんだって。いく?」
「あい。いってみましょうか。」
廊下はバスローブでは歩けない。 スカートとTシャツでいこうと思って、パンフレットを見ると、女性用は防犯のために鍵をかけて入浴してくださいと書いてあった。フロントで鍵を貰わないとダメみたい。
…面倒だなぁ。
とりあえず、下着だけ外して行くつもりで、Tバックを脱いでしまう。 ロングスカートだとわからないでしょ?
彼の手がスカートの中に入ってくる。
「ダメだよ。お風呂行くんでしょう。」
「ああ、少し触っただけでも濡れるよね。」
…当たり前じゃない。5ヶ月ぶりだもの。
1日仕事で立ってたから、先にお風呂に入りたかった。 その日使った、ヘアワックスが合わなくて、ベタついていたのが嫌だったのもある。 それに、今何かされちゃうと、大浴場なんて行く気力なくなるし。
バスルームにタオルをとりにいこうとするところを引き止められた。
「とりあえず、咥えろ。」
「…だって。」
嫌だという態度を示してみるけれど、本当は嫌じゃない。 ひざまづいて、口に含む。
…咥えなくっても、最初から、充分じゃない…。
自分が濡れているのがわかる。 最初から、こういう展開はわかってたはず。
「だから、そんなことしたら、大浴場とかいけないってば…。」
「うーん。ちょっとだけ入れてみようかなぁ。」
うーんじゃないってば。 そんなことしたら、あっ…。
久しぶりだったから、少しキツイ。 彼が奥まで入って来ると、痛い。烈しく突かれると、やはり痛い。 ダメダメダメ。まだ、ダメだから。ちょっと待って待って。
待ってといいながらも、感じてしまって、大きな声が出そうになるので、必死で抑える。泣きたいくらい感じるもの。…待って待って、ごめん、お願い。まだ…。
身体がまだ感覚を思い出していない。 あまりにも激しい動きだとついていけない。 感じるのに、感じるのに、思うように感じられなくて、もどかしい。
あたしが待って待ってと言うので、一旦彼が離れた。
「…もう、ダメっていってるでしょう。ひさしぶりだから慣らしが必要なのよう。」
「うーん。そか。」
すでに、大浴場へ行こうなどという気力はみじんもない。 久しぶりに感じた子宮の痛みと収縮と、でもイけないジレンマで泣きそう。
ベッドの上でぐずぐずしていると、お尻を叩かれた。
「いやぁん。痛いぃ…。」
そのまま後ろから挿入される。
「…だから…ダメだって言って、る、の、に…あああん…。」
思うように昇れない。 隣の部屋が気になって声も出せない。 激しくなる動きに、耐えられなくなってきた。 自分の中がヒクヒクと動くのが感じられる。 でも、でも…。ダメかも…。イけない…かも。
「…すんげー気持ちいい…もう出しちゃおうかな…。」
あたしの返事を待たずに彼が果てる。 同時にあたしも軽くイってしまう。 でもあたしが欲しい[アノ感じ]ではない。
「はぁ。イってしまひました。」
「…あい。」
ティッシュをシュッシュっと抜いて、アイヨという感じであたしに貼り付けた。 んもう、何よぉ…。
「さぁて風呂にでも行って来ようかなー。」
「あたし今動けないから、部屋でシャワー浴びるよう。フロントで鍵借りなきゃいけないのに、【今出されました】みたいな顔してたら恥ずかしいじゃん。」
「はぁ。」
正直、動ける状態ではなかったし。
「あい。では行ってきます。」
何事もなかったかのように、彼はバスタオルを抱えて部屋を出て行った。
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しばらくベッドに突っ伏したまま、余韻を楽しむ。 子宮が痛い。まだ慣れてない感じ。
落ち着いてきたので、ベッドに座って、タバコを一本吸った。 シャワーを浴びようと立ち上がる。 流れでる感覚。
左の太股にあたしの中から逆流した精液がツーっとつたった。
温度調節がうまくいかない。 微妙に調節しないと、熱くなったりぬるくなったり。 顔を洗い、髪を洗い、身体を洗う。 両脚の間を触ると、体液と精液が混ざり合って、ヌルヌルしている。 前戯もないのに、相変わらずよく濡れるよなと思いつつ、ボディソープで勢いよく洗い流した。
髪を乾かして、歯磨きをシャカシャカしていると、ノックが聞こえたので、裸のままドアを開けにいく。
「お風呂どでした?」
「はぁ。まぁまぁでしたよ。ひとりだったし。」
「そか。」
歯磨きを終えて、さてっとベッドに入る。 あたしはやっと慣らし運転が終わった段階。 歯磨きを終えた彼がベッドに入る。
トランクスも脱がせてしまって、あたしはまた咥えはじめる。
気持ちよさげに目を閉じる。…あ、危険信号だわ…。 布団が大敵。ベッドが大敵。 寝かさないようにたまに唇を離して話しかける。
「…ね、寝ようと思ってるでしょう?」
「そんなことはなひぞ。気持ちいいなぁと思ってるだけだよ。」
その答えを聞いても安心はできない。 唇と舌で愛撫していると、普通に反応はするんだけど、なんだか、頭の上で妙な音がしてきた。
ゴシゴシ。ゴシゴシ。
何度かその音がしたので、音がした時に見てみると、眠たげな目をゴシゴシこすってる彼がいた。
「…もしかして眠い?」
「…あい。」
「入れてもヨイ?」
「あい。お好きに。」
入れる時の感覚は、とても良い。 騎上位はあたしが一番感じるけど、彼は動く事がないので、楽な体位なのかも。
ふと気付くと、本気で寝そうになってる。
「…眠い?」
「あい。とても眠ひです。」
「んもうっ、つまんないつまんないつまんないっ!ちゃんとしてくれなきゃつまんないっ!」
「あい。申し訳ない。」
セックスの途中で寝られるなんて、とっても嫌。 だから、途中で終わらせてしまう。だって、本当につまんないもの。 そして、彼の協力がないと[アノ感覚]は絶対に味わえないこともわかってる。
「じゃぁさぁ、『ごめんなさい、寝かせて下さい』って言ってよう。」
「あい。ごめんなさひ。寝かせて下さいムニャムニャ。」
「…本気で眠たいのね。」
「もうよい子は寝る時間なんだよぉ。ひぃー。」
「何泣いてるのよう。んもー、最初にいかせなきゃよかったよう。」
「あい、申し訳ない。眠ひよ。」
彼は布団にくるまって、薄ら笑いを浮かべて今にも寝そうだ。 まるで子供みたい…。
「お布団がダメだよね。いっつもお布団に負けちゃうよね。」
「お布団を発明した人は本当にえらひよ。尊敬しちゃうよ…ムニャムニャ。」
「何ようー。寝入りはいつも速攻じゃん。起きるの苦手なくせに!」
「お布団とはいつもガチンコ勝負で勝った試しがなひんだ…。」
「明日ちゃんとするぅぅ?あたしはぁ、ガッツリセックスがしたいのっ。」
もう返事がない。 もう一度聞いてみる。
「ねへねへ、明日するぅぅぅ?」
寝入りかけの彼が、無言で手を挙げた。 …もういいよ。許したげるよう。おやすみぃ。
眠れそうにないので、安定剤と睡眠導入剤を流し込んで、またベッドに入る。
「んもう、ちゃんと愛でながら寝て下さひ。」
腕枕をしてもらって、後ろからスッポリ包まれて、眠った。
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目覚めたのが午前9時。
このホテルは延長が効かない。 長期滞在でも、午前10時から午後3時までは一斉清掃だから、外出せよという注意書きがある。
隣を見ると、まだぐーぐーと寝ている。 …寝起きが悪いから早めに起こさなきゃ。
「ねへ。朝だよ。」
「…ぁぃ」
「コーヒー買いに行くけど、いる?」
「…ぁぃ」
タンクトップとスカートだけを着けて、ロビーの自販機でコーヒーを2本買う。 部屋に戻って歯磨きして、化粧をしていると、やっと彼が起き出した。
午前10時ぎりぎりにチェックアウトして、車に乗り込む。 さて、どうする?お腹空いたねぇ、でも今の時間に食べちゃうとねぇ。 何を食べたいか話しつつ、到着した駅方面へ戻った。
ぐーぐーとお腹が鳴る。
「お腹すいたなぁ。らーめんでも漁港でもいいですよう。」
「うーむ。もう少し考えよう。」
11時近くになって、彼はやっと何が食べたいのかが決まったようだ。
「ハンバーグとかいいなぁ…。」
「ハンバーグ?びっくりドンキー?」
「いや、○○ってとこは関西にないだろう。」
「見たことないです。じゃぁそこで。」
ナビで検索して、目的地を設定。 来た道を少し引き返す事になる。 国道は渋滞。ナビではゴールが見えてるのに、近づかない。
「お腹が空いたようー。」
「はぁ。なかなか着かないねぇ。」
道を間違えて、またナビに入力して、遠回りして到着。 アレ?誰もいないよ。人気ないのぉ?いやいや、そんなことはないはずだ。
ハンバーグをオーダーして、お腹が空いていたのでサラダバーを食べる。 ナスの揚げたのがおいしかった。ワサビドレッシングはツンと来たけど。
肉肉したハンバーグ。 牛肉100%で、ほんとに肉って感じ。外側は炭火でカリカリしてて中はジューシー。 ふぅ、満足。
「で、どうするんだぁ?」
「昨日、『明日はちゃんとしますぅぅ』って約束したよ。」
「…そんなこともあった気がするなぁ。」
もうお馴染みになった感があるホテル街。 連休だけど、昼間は空いてるみたいだ。連休はみな遠出するんだろうか? 間違えて、こないだ泊まったホテルに車を入れてしまった。 「ああ間違えた」と彼はまた車を出す。
「別にここでもいいよう。」
「せっかくなので、他のホテルへ行こうかと。」
結局決めたのは、一番端っこのホテル。 部屋に露天風呂がついてるらしい。
外観はちょっと趣味が悪いけど、内装は普通。 なにより、このグループホテルはアメニティが揃ってるのでありがたい。
305号室。 内風呂はガラス張りで、露天風呂には部屋から出入りするようになっていた。 さっそくお湯を張る。 マッサージチェアに座ってお湯がたまるのを待つ。 相変わらず、エロティックな雰囲気なんてぜんぜんない。
天気がいまひとつだったので、露天風呂は少し寒かった。 せっかく内風呂から持ってきたマットも使えなさそう。風邪ひいちゃうね。
内風呂にもお湯を張っておこうと思って、彼が持ってきたマットをずるずると引きずってまた内風呂に戻した。お湯の温度を設定してお湯張りをスタートさせてから、露天風呂に戻る。向かい合って座って、彼のモノを手にとって遊んだ。
「お湯の中にあるから、咥えられません。」
あたしは彼を口に含んで遊ぶ。 遊んでいるつもりが、いつの間にか立場が逆転する。 押さえつけられて、無理強いされるのに弱い。 涙が出そうな程苦しいと思うのに、そうされればされる程感じてしまう。 湯船に腰掛ける彼の脚の間に顔を埋めて、一心不乱に舌を絡ませる。
あたしの両脚の間には、お湯とは違う粘度を持つ液体が、溢れていた。
壁に手をついて、後ろから迎え入れる。 昨日とは違う感覚。身体が慣れたんだろうか? 上昇がはっきりとわかる。 痺れるような快感。…キモチイイ。
一旦離れて、内風呂へ移動する。
マットに寝ころぶ彼にローションをかけてヌルヌルと遊んだ。
「うわぁぁい。ヌルヌルゥ。」
ヌルヌルのローションはお湯と混ぜるとツルツルと滑る。 でもどうやって遊べばいいのか、いまいちわからない。
ヌルヌルのまま、あたしは彼の上に跨って迎え入れて動く。 摩擦感が少ないので、いつもと全然違う感じ。動くのもスムーズ。 入れたままで反転も簡単に出来てしまう。
後ろからの体位も好き。 お尻を平手打ちされるのも好き。 馴染んで来た身体は何をされても反応する。 入れられたまま、後ろに指が入ってきた。
…快感。
前はそんなじゃなかった。 嫌悪感が先立って、感じるどころではなかったから。 安心感?なんだろうか?
そして、あたしは イク。
彼にはまだイっちゃダメだと言いながら。
お風呂から上がって、彼はベッドに横になる。 彼の手があたしの頭を導く。 フェラは好きだから。そういう風になるように仕込まれたから。
でも、ここでも布団は大敵だから、様子を見ながら愛撫を続ける。
「眠い?」
「ん?大丈夫だよ。」
「いつになったら入れていただけますか?」
「気持ちいいなぁと思ってるんだよ。」
「んもぉ。」
我慢の限界まで唇と舌と喉であたしはフェラをしつづける。
「入れて下さい…。」
「ん?そか。いいぞ。」
彼の上に跨るあたしは嬉々としているんだろう。
騎乗位なので、騎乗位向上委員会の実践をしてみる。
「…ねぇ。どうやったら気持ちいい?上下?前後?」
「どちらでもいいですが。やってみてもらわないと。」
前後に動くのはいつもの事だから、上下に動いてみた。
「ね。気持ちいいの?」
「うーん。なんというか、それはマヌケだなぁ。」
…マヌケかぁ。 マヌケとか言われてしまうと感じるものも感じない。 そっか、見た目がイマイチなのね。 確かに、上下運動って、膝立てだしカエルみたいかも…。
諦めて、いつものように前後に動く。 コリコリと子宮口に当たる感じがする。 痛くて感じる。
もう少しもう少しもう少し…。 ダメダメダメと自分で抑えながら、動きを段々と大きくしていく。 途中で気を抜くと、中途半端に達してしまうから。 両方の乳首を彼がつねるように刺激した。 快感が増幅する。
もう少し…もう少し…。あ、あ、来る…。 いや、あっ、ダメっ、来る…。
[あの感覚]
白。真っ白になる。 普段の波ではない。 下半身が全部子宮になってしまったような、そんな感じ。
彼も同時にイった。
あの瞬間はわけがわからなくなっているから、自分が感じる事で精一杯だから、彼がイクのをちゃんと確認出来なかった。
身体が満足したのか、無性に眠かった。 腕枕で少しウトウトする。 途中、彼がそっと腕枕を外して、バスルームへたつのがわかったけど、起きあがることがまだ出来ない。目を閉じたまま、彼が動く気配だけを感じていた。
シャワーを浴びる音。 戻ってきてタバコに火を付ける音。 テレビの電源を入れる音。
あたしの知らない所で、彼はいつもどういう風に生活してるのだろう。 そんなことを想像してみる。
「…今、何時?」
「ん?三時過ぎだよ。」
「そか。」
そろそろ用意しないと。 新幹線の時間までには駅にたどりつかないと。
チェックアウトして、お土産を買いにいく。 毎回、あたしはこの土地でいろんな物を買って帰る。 近くに出来た大きな土産物店で、物色。
「どれがいいかなぁ。」
「結局どれでもいいんだろ?」
「まぁそうなんだけど。」
「インド人のナンはないねぇ。」
「そだねぇ。」
「広いけど、品揃えはそれなりってとこだな。」
結局また、いろいろと買い込んでしまった。 買い出しに来てるのかしら?あたし。
「ね。しらすのかき揚げのおうどんを食べる時間はある?」
「うむ。大丈夫だろう。」
うどん屋さんに連れていってもらう。 桜エビと枝豆の天麩羅うどんと、しらすの天麩羅うどん。 おダシが黒いけど、関西風味に近い少し甘い味付け。
「あのねぇ、うどんかラーメンか食べようと思ってたの。」
「そか。」
早い時間だったから、お腹がイッパイになった。 これがあたしの夕食。 後はもう駅まで送って貰うだけ。
帰り道、ナビが示す道と違う道を彼は走る。
「あえて、ナビと違う道なんだよ。」
「ガチンコ勝負なのね。」
「そうだよ。」
「いい具合の時間だね。間に合う?」
「あい。余裕だろ。」
3年と4ヶ月。 往復8時間をかけて、あたしは何度かここに来ている。 何度この道を送って貰ったんだろう。 なんとなく、道がわかってきている。
いつもどうお礼を言おうかと迷う。 何をどう伝えればいいのか、考えてしまうと言えなくなる。
「…あのね。貴重なお休みをありがとうございました。」
「いへいへ。」
駅のロータリーが見えて来た。 少しだけ、淋しい。 車は降車場に近づく。
「ありがとね。」
「あい。」
「あのさ、また来てもよいですか?」
「はい、どーぞ。」
「ありがとう。気を付けてね。」
「あい。」
走り去る車をちょっとだけ見送って、駅へ向かう。 まだ列車の時間まで少し間がある。
雑誌と飲み物を買って、ホームで時間をつぶす。
強くなったなぁあたしも。 ひとりでこんなとこまで逢いに来るなんてね。 そして、強くなったと同時に、一部分がとても脆くなった事もわかっている。
彼はそんなあたしに気付いているのか、いないのか。 そこんところは、よくわからない。
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移動中は、ひとりなので、色々な事を考える。 考えても答えは出ない。 気付くと眠っていた。 ちょっと泣いたんだろうか、マスカラが取れかけていた。
帰宅してメールを一通入れる。
「ありがと。」
珍しく返事が来た。
「どーいたしまして。」
考えても答えは出ない、往復8時間。 それでもまた、あたしは逢いに行くのかもしれない。
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