「金曜日そちらに行くのは可能でしょうか?」
そんなメールが来たのは、月曜日の夜のことです。 ん?金曜日?
「可能です。」
土曜日にこちら方面での用事があることは知っていた。 出来たら寄ってねと伝えていたんだけど、きっとホテルも取ってあるだろうし、無理だろうと思っていた。無理なら無理で押しかけるつもりだったんだけど。
返事を送ると電話がかかってきた。
「まだ決定じゃないんだけどね。仕事の山がその前に来るので、どうなるかはわかりません。」
「はぁ。まだわからんってことよね。」
「あい。いけたらいくということで。」
「あたしは来るんなら土曜日の夜かと思ってたんだけど。」
「土曜の夜は飲んでるな。」
「そか。また連絡下さい。」
前日になってもどうなるのかわからない。 来るのか?来ないのか?無理なのか?だめになったのか?
でもいつもそうだもの。少しイライラはするけど、もう慣れた感がある。 無理なら無理だと、はっきり言う人だ。
金曜日当日。 午前中は連絡がない。 午後になっても連絡がない。
…だめなのかしら?ふとそう思う。
でも、そう考えてしまうと、本当にダメになりそうなので、あまり考えない。
夕方に友人に旅行のお土産を渡すつもりでメールでやりとりをした。 早番だというのに、連絡がない。…きっと残業なのね。 接客業ってそうだもの。そのへんはわかってるので大丈夫。
ピロピロとメールが来たので、彼女からかと思ってみると、受信フォルダーに新規メールがない。彼からのメールは自動的に専用のフォルダに振り分けられるように設定してあるから、そっちを確認すると、メールが来ていた。
「向かう予定で行動中。」
時刻は既に午後7時半。 今から来るっていうと、午後11時過ぎ? でもまだ予定らしい。そして、まだだいぶ時間がある。
9時過ぎには友人と待ち合わせをして、お土産を渡してファミレスでお茶をした。 最近出来た彼氏のことを話す彼女は、とても嬉しそうだ。 仕事のトラブルの事も少し話す。今、一番大変な時なのかもね。
1時間程お茶をして、あたしは一旦家に帰る事にした。 途中でドンキホーテに寄って、生活用品を少し買って、雨が降っていたので、傘も取りに帰りたかったから。
次にメールが来たのは、11時少し前。
「そろそろ京都です。」
「じゃぁそろそろでます。」
新大阪までは夜だと早い。 思ったより早く着いてしまって、しかも車を停めるスペースがなかったので、1階のロータリーへまわる。最終新幹線が到着するからだろうか?どこも迎えの車でいっぱい。 なんとか停車するスペースをみつけて、メールを入れる。
「停める場所がなかったので1階ロータリーの空港バスのちょっと手前です。」
もう着いてる頃なのに返事がないなぁ。 と思っていると、フラフラとアイスコーヒーを飲みながら、こちらへ向かって来る背の高い人を発見。
おもむろに後部座席のドアを開け、荷物を放り込んで、助手席に乗り込む。
「はぁ。お腹空いたよ。」
「あい。たこやきでも食べに行きますか?」
「うむ。ロッテ優勝おめでとうだ!」
あたしも旅行行く前に、同じ事言ってたよ。笑 ガサガサと包み紙を開けて、ハンバーガーをパクパクと食べはじめた。
「何よう。食べてるじゃない。」
「たこやきの分は取ってある。」
「海老バーガー?」
「当たり前だろ。」
「それにしても、お久しぶりです。」
「はい。お久しぶりだ。」
「忙しかった?」
「忙しいよ。先ほども飲み会を抜けて出て来たところだ。」
「そかー。」
そんなことを話しながら、最近出来た、たこ焼き屋の本店に向けて車を走らせる。 うちの軽は人を乗せるとちゃんと走らないなぁ…。がんばって走ってるんだけど。
「こないだオザヒナと五月山登ったら、車が走らなくて困ったよ。」
「軽トラでとろとろ走るおじさんの気持ちがわかったってことですな。」
「あい。」
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「お嬢さんは何にするんだぁ?」
なんでお嬢さんて呼ぶのよう。笑。 前からそうだけど。お嬢さんて呼ぶか、あなたと呼ぶか、たまに名前で~*Yuuちゃん。 でもどこかに出かけたりするといつもお嬢さんになる。 みのもんたじゃないか!
お嬢さんと呼ばれたからといってウハウハはしなけどね。
ダシ付きのたこ焼き12個と、ビールとジンジャエール。 ハフハフと明石焼のように食べると美味しい。
「あつっ。熱いよぉこれ。」
「でも熱いからって怒るようなもんじゃないしなぁ。」
…確かにそうだけど。
ビールが少し残っていたけど、お腹がいっぱいになったので、店を出る事にした。 後は家帰って風呂だな。風呂。
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家に着いて、部屋に入る。 スリッパを履いて彼は「おじゃまします。」と言う。
大きな荷物をどさんと赤いソファの下に置き、衣装バッグをどうしようと考えてる。
「カーテンレールにでもかけておけば?」
「あい。」
お湯がたまる間、少しだけテレビを見る。 テーブルの椅子に座る彼の横で、たったままチャンネルを変えてると、後ろから引き寄せられた。 おもむろにジーンズを脱がそうとする。
「まだ濡れてないってば。」
「そうか。確認しようと思ったのだが。」
「たこやき食って濡れてたらおばかさんじゃん。」
ちょっとだけ胸とか乳首とか悪戯された。 何か番組をやってるので、テレビ欄を確認しようとiBookを立ち上げる。 同時に彼もPDAを立ち上げた。
「いやぁ。便利だねぇ。すぐに繋がる?」
「ん?なんでよぉ。」
「そういうふうにしたの~*Yuuちゃんじゃないか。」
「知らないよそんなの。」
「メッセンジャー立ち上げてみ。』
『どーも。』『うわすごい。』
そんなことをしていると、お風呂にお湯がたまった。
相変わらず、勢い良く服を脱ぐ人です。
「ね。痩せたよね…。」
「ああ、痩せたね。ちょっとね。」
上半身が一回り小さくなった気がした。お尻は相変わらず大きいけど。バブのホイップミルクを入れて、お風呂に入ってもらう。前の家よりも浴槽が小さいからひとりずつ。 あたしが先に顔を洗って、髪を洗って、入れ違いに彼が身体を洗って、顔を洗って、髪を洗う。 背中を洗うときはあたしがゴシゴシする。
ちょっとだけ一緒に入っても、とにかく狭い。 あたしが身体を洗ってると、彼が上がってもいいですかと聞いて来た。
「上がってもいいですよ。」
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