珈琲の時間
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2001年12月15日(土) 様々な思い

昨晩は誰も知らなかった『三山』の由来を話してくれた。

妹と待ち合わせして、午後7時50分病院に着く。
泊まり当番の薫ちゃんと千代子叔母がいた。
妹は足。私は左脇腹をマッサージ。
皆で笑いながら穏やかな空間。
唐突に『三山はダイゴジ、ウエヤマ、カタスだ。』と言う。
皆一瞬意味がわからなかった。叔母が理解してメモをとる。
あぁ、そうか。
おじいちゃんは俳句を詠むのが好きだった。
その俳号に使っていた『三山』の事だった。
おじいちゃんの家を囲む三つの山の名前。
そんな意味があったんだね。
大事にしていた大好きな空間なんだね。

その日の夜はなんだか眠くならなくて
仕事のために少し眠らなくてはとPC閉じようとしていた時に電話がなった。


午前3時。
薫ちゃんから『酸素が上がらないから危ないかも知れない』
2時30分頃から容態が急変。いつもと違ってなかなか痛みがおさまらないという。
妹は疲れて起きないので母と病院に向かった。
主だった親戚は集まっていた。ちょうど落ち着いたところだった。
意識が戻って来たのがわかったようだった。そして眠ったのか静かになる。
酸素が上がらないので呼吸に合わせて酸素の袋の部分を押して補助をする。
勝行叔父と交代で酸素を送り続けた。

痛み止めがきれて激痛で目が覚める。
暴れる。苦しそうにもがく。
薬がなかなかこない。皆それに対して不満が出る。
苦しんでいる本人の前で不安になるような話題はして欲しくなかった。
薬が届いて効きはじめた時に起きたいと言った。
ベットを40度くらい上げてあげた。
安心したのか再び眠りに着く。

暴れたせいか一時酸素が52まで落ちる。
補助で送り続け少しずつ上げていく。
68まで上がったところで父が夜勤明けで到着。午前7時20分。
しかし意識は戻らず、呼びかけても反応がない。
仕事がある母を送るため8時に病院を出た。
妹を起こして折り返し着いたのが9時10分。
依然として眠ったままだった。

10時くらいだったか酸素が82まで上がった。
そんな時にまた薬がきれる。
激しい痛みの中で父の事がわかったようだ。
たぶんありったけの力ですがりついた。
言葉にならない声で何か言おうとしていた。
そして父に抱かれながらその横で酸素を送っていた私の方を目を見開いたままジッと見た。ずっと見ていた。
見ながら何かを払うように手を一生懸命に動かす。
そうか、もういらないか、『わかった、もうやらないよ』
酸素を送る手をとめた。

暴れた。起きたいんだよ。さっきもそうだった。
看護婦さんの許可なんかいらないよね。上体を起こして座らせた。
落ち着いて満足したように見えた。
その時にはたぶんモルヒネが効きはじめていたんだ。

そしてそのまま意識は遠のいていった。

正午
交代で家にかえって休もうということになり一旦帰宅。
仕事場に遅刻をすると言っておいたため、帰りがけ一度顔を出して休みをもらおうと思ったらめちゃくちゃ忙しそうだったので、とりあえず働く。

午後5時。労働を終えてやっと帰宅。
とりあえずお風呂。
そして寝ないで働いて遅くに帰ってくる母の布団でも敷いといてやるか。
そして少しだけ寝てから病院に戻ろう。
目覚しかけて布団に入ったまさにその瞬間、携帯が鳴った。

午後8時20分。
『血圧が低下してきて上が66まで落ちてるんだ。これる?寝てた?』
『危なかったね、寝るところだったよ。』
不謹慎だろうか?笑ってしまった。
タイミングが良すぎる。昨日といい、今日といい。
呼ばれているかのようだなぁ。待ってて、すぐいくからね。

午後9時
『早かったね』と皆に迎えられた。
『早かったでしょ?』ほくそ笑んでやった。

泣き上戸が泣いていた。それを見て勝行叔父が
『今頃泣いているやつは看病をあんまりしなかったやつらだな、』
なんて、こっちを見た。
『俺なんかはもうちゃんとやってたから心の整理が出来ちゃってるもんな』
と同意を求める。
『そそ、笑って見送れって言ってたじゃん。おめでとうと言えって。』
泣き上戸が『だって可哀想で』と言うので
『どうして?あんなに痛がったのがなくなるんだよ?もう苦しまなくていいんだよ。おめでとう。よかったね。って言えるでしょ?』
『そうだよ、紅白の垂れ幕用意しろって言ってたよなぁ』
『まだ聞こえてるよ、たくさん笑わなくちゃ。笑って見送れって最後の言い付けぐらい守らなくちゃね。』
『あの病室は何笑ってンだろうなって言われるんだろうな』
とにかく楽しい話をたくさんしよう。
楽しかった思い出に感謝を込めて。

皆笑いながらもモニターの数字の変化には敏感に反応していた。
血圧、酸素、心電図、生きているという証拠が写し出されていた。

長い長い夜だった。

顔を覗き込んでいたら右の目がうっすらと開いた。
見えているのかな。
(私だよ。わかるかな。ここにいるよ。)顔を近付ける。
目が本当に少しだけど見ようとするように動いたんだ。
しばらく覗き込んだまま心の中で勝手に話をしていた。
そしたら眠くなって来てベットのわきにしゃがみ込んでうたた寝をした。

赤と白のストライプがクルクル回ったような柄のとても小さなロウソクの灯が鼻先2cmくらいのところにあって、吸い込んだ空気を頬にためて『フッ』っと短く吐いた息で消えた。

物音で目が覚めた。感触が残る夢だった。ほんの15分程度なのに。

午後11時45分家に電話。
状況を説明した。








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