即興詩置き場。

2002年01月29日(火) 「お帰りだけで埋まっていく」/「舌のある風景」


某サイトに即興詩をひとつアップ。ポップなやつ。
推敲中の詩は、そろそろ推敲が佳境に入ってる。
今週中にアップできそう。

即興詩と言えば、
タイトルにある2つの作品は即興で書いたやつで、
どちらもサイトに正式にアップしてないけど、
けっこう気に入ってるので、そのうち残しとくつもり。
ま、気が向いたら。

読めばわかるけど、毛色が全然違ってます。
んがしかし、
瞬間的なイメージ(映像)を元に構築したってのはどちらも同じで、
俺の中では、かなり似通った場所(部分)から発生してる。
兄弟みたいなもん。



「お帰りだけで埋まっていく」


エレベーターに乗るとお線香の匂いがしておじいちゃんが帰って来たんだと思いました
10階にあるマンションのドアを開けるとおじさんやおばさんや知らない人がいっぱいいて
みんなでお寿司を食べていました
私は制服を脱いでこの前買ってもらった喪服に袖を通します
お母さんも喪服です
今日はお通夜です

病院にはあまり行かなかったけれど
行ってもチューブだらけで話ができなかったので面白くありませんでした
おじいちゃんはエレベーターがつらいようであまり外に出なかったけれど
倒れる前に一度だけ
「ここから棺桶を入れるのか」と
エレベーターの奥にあるフタを見つめていました

「夏は腐敗が激しいから」と
誰かが小声で話しています
おじいちゃんは棺の中で
なんだかよくわからない顔をしています
夜になってお父さんが戻ると
お線香の匂いが強くなったので
私はおじいちゃんのそばに行って
「すぐにいなくなっちゃうけど、今日はお帰りなさい」と
もう一度お線香をあげました
明日おじいちゃんはエレベーターに乗って
どこかで焼かれてしまいます
部屋中がお線香の匂いで埋まっていきました





「舌のある風景」


真夜中は
目を覚ます
ためにあるので咳を
ひとつ
ふたつ
くぐもるが音は出ない
仕方ない
舌がない
布団の中は
暖かい
ので夢では
ない
夢ではない
証拠に
いつものおんなの顔が
まただよ
目の前を
ふつうではない
まただよ
夢ではない
証拠に
舌が生えてくるのです床
じゅうに舌が

ザザッて
ザザザッて

ああ
私の舌です
ああ
こんなところに

たぶん
せんもう
という言葉は
私の舌のために
あって
這いずるのは
私の舌では
なくて

の背中に私の舌の感触が
まただよ
ふつうではないね
せんもう
うんどう
ザザッて
ザザザッて
運ばれていきます

運ばれて
いつものおんなの顔から
いつものおんなの顔から
まただよ
あしのうら
ぼんのくぼ
みみのあな
伸びた舌は
私の舌ではなく
ぬるり
ぬるりって
まただよ
舐められながら
まただよ
せんもう
うんどう
どこにいくのか
運ばれるのか




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