おひさまの日記
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アンナを叱った。 アンナが泣いた。 小さな手で涙をぬぐうその姿を見ている時、 私は自分がなにをしているのかわからなくなる。 自分が鬼畜に思える。
アンナにぶつける言葉は、昔、私が親から受け取った言葉。 アンナにする行為は、昔、私が親からされた行為。
こんな親になるもんか! そう心に決めていたのに、なぜ親と同じことをするのか?
それは「親にそうされた自分」が、 ダメで許してもらえない、受け入れてもらえない自分、 自分の中に存在していてはいけない自分だからだ。 「親をそうさせる自分」はいけない子。 親をそうさせることは自分の居場所と愛を失うこと、 だから、親を怒らせることはしてはいけない。 それをするのは悪い子なのだ。
子供はそう自分の中に刻み込む。
だから、同じことをしている子供を見ると、怒りが込み上げてくる。 自分が昔同じことをした時、居場所と愛を失う危機に瀕したから。 子供の中に、昔の自分を見るのだ。 だから、子供を叱りつけたり、怒鳴ったりしているようで、 実は、自分の中にいる小さな自分を叱り、怒鳴っているのだ。 子供がどうしても許せないのは、その子と同じ自分が許せないから。
意識の奥で震えているインナーチャイルドに、 私達はそういった形でしばしば遭遇する。
子供に対してだけではない。 周囲のあらゆる人に自分のインナーチャイルドを見るのだ。
投影、シャドー。
子供を罵倒し、自分が鬼畜に思える時、 実は、自分自身にしている行為がそれなのだと、 私達は知るべきなのだろう。 実は、自分自身に対して鬼畜なのだ。 自分自身に許していないものを、私達は他人の中に見て反応するのだから。
ここまでは、昔の私でもよく書いたり、言ったりしたことだ。 でも、今日はその先がある。
落ち込んで仲良しの友達と電話で話した。 「今日は怒り過ぎたかな…」 私がそう言うと、彼女は笑って答えた。 「あっはっはっは!もうそんなのとっくに忘れてるよ!」 「え!?」 私はそれを聞いて、目からウロコだった。
私は、アンナが、私のした行為を、 いつもいつも心に持ち歩き、 いつもいつも怯え、苦しんでいると思った。 青天の霹靂だった。
そして気付いた。 インナーチャイルドを責め続けているからこそ、 子供にした行為が、自分で苦しくて、 だから、子供もずっと苦しいと思っていたのだ。 よくよく考えてみると、そんなこと考えている方が不健康だ。
現に、アンナは、怒られてひとしきり泣くと、 また、いつものように、おしゃまで、可愛くて、楽しく遊び始める。 瞬間瞬間を見事に味わっているのだ。 確かに、怒られたことは、心に何かしらの傷は与えているかもしれない。 でも、それだけだろうか? そうじゃない。 こちらが、いつまでも子供の心の傷のことばかり考えているのは、 逆に、子供にとってよくないとも感じたのだ。
あちゃー!と思った。 私はやっちゃったかもしれない。 「私は被害者だから、こんなに辛いのよー! こんなに傷ついてるから、こんなに苦しいのよー! だから、ほら、子供にもこんなことしちゃうのよー!」 ただ単に、そう言いたかったのではないだろうかと気付いたのだ。 いわゆる悲劇のヒロインになりたかったのだ。 いやーん、こんな仕事してるのに、まだハマってたなんて! 笑いが込み上げてきた。
「傷つけたら癒せばいいんですよ」 中島先生のその言葉が私の支えだった。 でも、今まで、ちょっと違った意味でそれを実行しようとしていたのかもしれない。 彼女の痛みにばかりフォーカスし、 彼女の持つ喜びや楽しみ、そういった部分をすっかり忘れ去っていたのだ。 それは、バランスを欠いたおかしな行為だ。
子供を癒す、それは、一緒に元気よく遊び、心から楽しむことかもしれない。 そして、こちらが悪いことをしたらごめんねとあやまり、 次の瞬間には、また一緒に子供になってはしゃいだり、遊んだりする。 それで十分なのだ。 子供の持つ輝きにフォーカスし、それに便乗すればいい。 子供の真似をすればいい。
子供の心の痛みにばかりフォーカスしていた私は、 アンナに「私を許してくれますか?」と問いかけ続けていた。 それは、私が私自身に問いかけていた問いでもあったのだ。 私を許さない私、私に許してほしい私、そのドラマにアンナを巻き込んでいだけ。 子供の心を思い、それに向かい合っているようなふりをして、 私はただ単に被害者に成り下がっていたのだ。 そこから這い出るのがイヤで、被害者でいればこそのメリットを駆使していた。 「こんなに傷ついているのだから大切にしてちょうだい」 と。
ものすごい気付きだった。 そして、気付いた今、 私が今までさもわかっていたように、人に言っていたことが、 実は分かり切っていなかったのだと思った。
また一歩前に進んだような気がする。 心が晴れ晴れしてる。
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