おひさまの日記
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2004年02月17日(火) 季節は巡る

施設にいる父の要望で、母を面会に連れていった。
もちろん、私はいないことになっている。
父と母が話をしている小1時間の間、私はロビーのソファー座って待っていた。
その座り心地のよさに、いつの間にか眠りこけてしまった私が目を覚ますと、
ちょうど母が戻ってきたところだった。

母に会った瞬間、父は目を潤ませていたという。
家に戻っても生活が無理なことも、わかっているけれど、
でも、どうしても母と暮らしたいのだという。
夫婦だな、って、思った。
あんなに、死ね、って言ってたのにね。
もちろん、やけっぱちになって言ったのはわかってるけど、
本心じゃないからとは言え、聞き流せるほど私と母は大きな人間ではなかった。

きっと、タイミングだったのだ。
死ね、とか、殺す、なんて、今まで何度も言われてきた。
ハイハイ、って聞き流せるほど日常的な言葉になっていた。
だから、母が死ねと言われたこと、私がおまえのせいだと言われたこと、
別にそれが問題だったんじゃない。
ただ、大きなハザマにいる時に、私達に聞こえてしまったその言葉は、
今までの、死ね、や、おまえのせいだ、とは違って聞こえたのだ。
追い詰められていた私達母娘にとっては、
「ここで区切りを付けましょう」の合図になってしまったのだ。

父は、母とも一緒にいたい、私にも会いたいと言っていたそうだ。
アンナの話になると、涙を流して会いたがっていたそうだ。
嬉しかった。
99の闇と1の光、1の光は父のその想い、父のその真実だった。
私は、光を見た。
見たのだから、もういい、そう思った。
光はたった1だったけど、その光は大きな闇をも照らす輝きだった。
もういい、もういいよ、って思った。
父の全てを許せた気がした。
お父さん、大好きだよ、って、思った。

昔の形に戻っては、もう私達家族の関係は成り立たない。
これからは、新しい形で、愛を育んでいこうと思った。
この形だからこそ見い出せる愛を大切にしようと思った。

ロビーのソファーで眠ってしまった私が目を覚ました時、
私にはやわらかくてあたたかい毛布がかけてあった。
施設のどなたかがしてくれたのだ。
とても嬉しかった。
そんな心配りをしてくれるのだなぁ、ここは、って。

それで、わかった気がした。

父はここでとても大切にされているのだ。
以前の病院では暴れて手におえないほどだったのに、
ここに来てからは暴れずに過ごしているのだという。
きっと、父は、施設の方々のあたたかい介護で、癒されているのだと思う。
親身になって話を聞いてもらい、世話をしてもらい、
父の心は以前よりも満たされているのだと思う。
だから、まっすぐに、母や私への想いや、会えない寂しさを感じられるのだと思う。

ここを選んでよかったと心から思った。
ここなら父を大切にしてくれる、
ここなら父も心穏やかに過ごせる、
ここでなら新しい形で家族になれる、みんなが幸せになれる、って。
人の力を借りて、ようやく。

母も私と同じ想いだった。

季節は巡る。
もうすぐ2月も終わり、春が近付く。
人生にも、きっと、季節が巡るのだ。


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