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2002年03月13日(水) 初桜 ●小説新潮3月号

●医者にもらった薬はまったく効かず、何か見当違いなものを服用している気になって、市販の薬に切り替える。がぜん調子がよくなってくる。はてどういうことだ。これなら明日くらいには実家に戻れそう。

●小説を読んでくれた友人から電話がかかってくる。「ここを書きたかった」という芯は十分に心が動くけれど、その確信に持っていくまでの技量が不足しているとの辛辣な意見。4、5日クールダウンしたので、さて手を入れ直そうかと腰が少しあがる。ちょっとした興奮を冷ますために、常より長く公園を歩く。梅は散り、こぶしが旺盛な生命力で咲き誇る。暖かさにだまされた桜が一本。初桜。曇り空の中でみる木に咲く花たちは、あわあわと優しい。

●文芸誌を買っても、いつも読むのは狙いを定めた2本くらいなのだが、風邪を治す静養期につき時間があり、頭から熟読。たくさんの文章、たくさんの物語、たくさんの……。まとめて読んでいると、自分にとっての読書ってものが曖昧になってくる。決して活字中毒者として読んでいるのではないのだ。決して今の文芸界を知りたいわけではないのだ。
 作品を読むのは、わたしにとってやはり儀式的なものだ。はてしない物語のバチスアンがあかがね色の本の表紙を開けた時のように……。
 本屋だの図書館だので出会う。表紙を開くまで中身はわからない。少しずつ世界に取り込まれる。最後のページをめくる時には、もう誰かと世界を共有している。読む前のわたしと読み終えたわたしの、微差を抱えてしばし過ごす。
 不器用なので、読書にもそんな手順がわたしには必要。がむしゃらに享受して喜べるものでは、決してない。

*HP/Etceteraに「春がきた」をUP


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