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2002年11月23日(土) 無垢の情報。

●演出家が別カンパニーの海外公演に行くため、しばらく稽古は自主的なことのみ。わたしもいくらかのんびり過ごせる。とは言え、打ち合わせ続きで、相変わらず家での仕事は続くけれど。

●久しぶりに家にいてゆっくり出来たので、読まずにたまっていた新聞を一気読み。大体読むのは、天声人語を含む1面と(朝日をとっているので)、国際面、文化面、社会面だけ。隅から隅まで読むのも思いがけない拾いものがあったりして好きなんだけど、いつもそんな時間はとれない、残念ながら。

●わたしがモスクワに行ったと思ったら、あのテロ事件が起こり。日本ではずいぶん色んな人があれこれと心配してくれていた。業界の人は「あいつはミュージカルは観に行かないだろう」というアバウトな理由でさほど心配しなかったらしいが、恋人はそうもいかなかった。
 手に入る新聞をすべて買ってきて読んだのに、肝心の、一番知りたかった劇場の名前を、なかなか知ることができなかったらしい。結局、劇場の名前を正確に載せていたのは、日経だけだったそうだ。
 情報は同等につかんでいるはずなのに、何を伝えるかは新聞社にかかっている。日本人が被害者にふくまれていないということで、詳しく伝える必要なしと判断されたのか?
 彼はそれから新聞というものとのつきあい方が変わったと言う。

 モスクワで事件の推移をテレビにかじりついて見ていた時。わたしの中にはどんどん疑問符がたまっていった。
 解毒剤を用意しないままに毒ガスを使用した突入劇。そのせいで、被害者の多くが命を落とし、また多くが病院で生命の危機に瀕していた。そんな中、プーチン氏が病院を見舞う。誰も彼もが笑顔を作って彼に接する。「救ってくれてありがとう」と。誰も彼も。その映像が一日中繰り返し放送される。悲惨な死に様を晒しているテロリストの死体のアップ映像と共に。

 作為を感じざるをえない。見る者を何処に導こうとしているかが分かりすぎるほどに分かる報道だった。

 個として正しく判断する前に、正しく情報を受け取りたい、と、つくづく願う。他者に勝手に色づけされていない、無垢の情報を。

●朝方恋人から、ヨーロッパより無事戻るの電話がかかってくる。夜は一緒に食事を、という話だったのに、なかなか連絡がない。電話してみるとすっかり寝込んでしまったようで、うだうだと寝ぼけている。
でも、近い空の下にいるというだけで嬉しい。


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