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2002年12月06日(金) |
小さな乳歯の思い出。 |
●本日はお休み。色々と雑用をこなす。 これからしばらく、年末年始を含めて、いつ休めるか分からぬ身になるので、ちょっと部屋の整理などする。 ●引っ越しして2年になろうというのに、まだ未開封のダンボールがある押入に、おそるおそる手をつける。山ほどの使いかけのノート、かつてお世話になっていたワープロまわりの物。見つからなかった仕事道具。そりゃあまあ思いもかけないものが思いもかけないところから出てくる。 いっちばんびっくりしたのは、20年前飼っていた猫の写真が出てきたこと。 古臭いアルバムの最後の頁に封筒が貼り付けてある。何なんだろう?と開封してみると、そこには小さな小さな白い歯がひとつ。「今日、乳歯が抜けました」と書いた便箋と一緒に。
●東京に出てきて、独り暮らしになかなか慣れなかった時分に、大学のともだちから子猫を貰い受けた。以来、どれだけかかわいがり、どれだけか救われた。長らく長らく、わたしの友だちだったが、医者も首をひねる突然の内臓障害で死んでしまった。1週間くらい大学を休んで看病したあげく、様態の変化に気づき抱き上げたわたしの腕の中で、ゆっくりゆっくり死に至った。柔らかかったものがだんだん固くなり、温かかったものが、だんだん冷たくなっていった。
●あんなに大事にして、あんなに泣いて別れたのに、乳歯のことなんて忘れていた。小さくな白い塊が、まだこの家の中で息をひそめていたなんて。
●人間が忘れていく生き物でよかった。切ないことがたくさん蘇るのを堰止めながら、そんなことを思った。
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