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| 2003年05月05日(月) |
休日ならではのこと。●不自由な心(白石一文) |
●何もせず、ただ本を読んで過ごした。ベッドで、ソファーで、食卓で。1冊を読み終えたら、買い物に出て、すっかり生活感のなくなった部屋に生活の匂いのするものを補充した。ゆっくりコーヒーを淹れ、丹念にサンドウィッチを作って食べた。仕事をしているときは、コンビニのあのサンドウィッチの三角形を見るたびにげっそりするものだが、自分で作ってみると、サンドウィッチという食べ物の美しさが思い出される。はじめてこんな食べ方をした人に感謝する気持ちが湧いてくるというものだ。 何か美味しいものを食べているとき、よくそんな感謝の気持ちが湧いてくることがある。どんな食べ物にも、最初に食べてみようとした人が存在し、当たり前と思われている料理法も、かつて誰かが、どうしたらこれはおいしく食べられるんだと、研鑽を重ねた結果にほかならないからだ。見た目がグロテスクでも美味なものをいただいたりするときは、もういない何処かの誰かに手を合わせたい気持ちになる。 食べるっていうことが、生を繋ぐものだから、ここまで食文化は発展している。生きたいっていう思いと、よりよく生きたいっていう思いが、ずっとずっと営々と、繋がってきた先に、自分がいる。そんなことを考えながらサンドウィッチを食すのも、休日ならではのこと。
●最近お気に入りだった白石一文。このたびは短編集だった。この人の作品では、作者の書こうとしていることが、そのまま登場人物の台詞や心情描写になって現れる。物語は、それを導き出すための筋立てにほかならない。 現れる彼らの人生観はかなり偏っているので、それに鼻白む人はまったく読めないだろうし、それにくすぐられる人には愛せる作品になるんだろう。わたしは後者なのだが、さすがに似通った登場人物の感情吐露に疲れてしまった。この人が、もっと物語そのものにこだわった作品を読みたいと思う。 ●旅から帰って、ポストをのぞいて、その場で封を破った郵便物があった。かつて住んでいたN区税務署からの郵便物だ。 引越しをしてから3年目になろうというのに、昨年末、突然、税金徴収の知らせがきた。すでに現在の区でちゃんと税金をおさめているはずの時期なのに、7万くらいの課税をされ、延滞懲罰金さえたっぷりついている。 なんでこんなことになるのだと、つらつら考えていて、かつての取引先の事務ミスを思い出した。住所変更の知らせが反映しておらず、支払い調書が古い住所で送られてきたので、発行しなおしてもらったことがあったのだ。 時期的にも、税額的にも一致するので、わたしはその旨N区に手紙を書いた。そこからが長い闘いで、とにかく、きっちり説明を手書きで丁寧に書いたにもかかわらず、「払わないと財産差押えとか、嫌な結果になるので、払った方がいいですよ」ってな感じの郵便物が届き続けるのだ。で、また事情を記して調査を願う手紙を送ってみる。すると今度は、「陳情のある場合、月に2日直接相談できる時間を設けるから、来い」ってな感じの印刷物が届く。……休日などまったくない忙しい時期に、1週間に1度届くそれらの郵便物に、どれだけ嫌な思いをしたことか。 で、このたびようやく、この面倒な疑いから解放されたのだ。でも、一言の謝罪もない。ただ既課税額7万円の下に、今回課税額マイナス7万円、要納付額0円と書かれた納税票が入っているだけ。 まったく馬鹿にしてる。でも、世の中はそういう理不尽なことばかり起こるものだし、いつまでもその理不尽に取り付かれて人生を終えてしまう人だっている。この小さな理不尽からこの度逃れられたことは、ちょっとした幸い。ただまあ、役所に対しての憤懣やるかたない思いは、なかなか消えないけれど。
●明日もお休み。恋人と深夜食事ができるかも、と言いあった夜だったが、「今終わったよ」と電話のかかってきたのが2時半のこと。さすがに今日は断念した。残念。 仕方ない。今から菖蒲湯でもいれて、また深夜の読書を楽しむつもり。
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