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2003年05月07日(水) いい1日だな、今日は。

●今日は、この夏から秋へとはじめてタッグを組む演出家と出会う日。11時に眠って、12時半に恋人の「食事しようよ」電話を断ってしまうくらい、ちょっとばかり緊張してた。
 この度は、やっつけ仕事でしかないコンサートの手伝いみたいなもの。9時に現場について、スコアと台本を受け取って、11時には、職業的にもう現場を仕切ってた。……そんなことはどうでもよくって。今日はちょっとした出会いがあった。

 歌い手の一人は、最近ミュージカル界で売り出し中の男の子。何度か、わたしたちの稽古場に見学にきていたりして、初めて会うわけじゃない。でも、ひとたび彼が歌い出したとたん、わたしの鼓動は早鐘状態に……。
 似ているのだ。わたしが10年前、心から愛した人に。

 歌は彼にとって「水」らしい。水を得た魚のように、歌い始めると、彼自身がほころんでいる。神様から与えられたのびのある高音で空気を震わせるときの、ちょっと誇らしげな表情。ぼくはほころんでいるよと、恐れもてらいもなく、世の中に自分を表明している。……その顔が、かつての恋人のもっとも美しい姿にそっくり。
 ふと目線を下げたときの、上まぶたのつくるまあるい丘の曲線。まつげの生え際の、三日月のようなライン。鼻筋の向いた方に視線をやるたびに、その曲線に心が動く。ふと上を向いたときの首のライン、歌い上げるほどに赤くなっていく耳たぶ……などなど、ちょっとしたところに様々な喚起の要素があって、わたしは密やかにドキドキする。
 こんなことって、あるんだなあ。似てる人が目の前にいて、似てる人が今をきらきら生きているから、かつての自分の愛情まで、きらきらと蘇ってしまう、そんなこと。
 職業人の仮面をかぶり、さくさくと現場を進行しながら、わたしがたかだかリハーサルの歌なのに目頭を熱くして感動していたことなど、誰も知るまい。

 いい1日だな、今日は。

●恋人から珍しく午後8時半という早い時間に電話があるも、わたしは打ち合わせ中。久しぶりに恋人と二人での食事、そして酒の時間が待っていると思うと、わたしはまたどきどきわくわく。2時間待たせて、ようやく邂逅。
 そんなこんなのあれやこれや、またほかのトピック、と、書きたいことは山ほどあれど、……今夜はどうしようもなく眠い。
 また、明日、書くとして、眠ってしまおう。


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