Journal
INDEXbacknext


2003年06月04日(水) 読んだり観たり。 ●重力ピエロ(伊坂幸太郎)●Elephant Vanish

●「重力ピエロ」は、「なんだ、小説まだまだいけるじゃん」という、ストレートなんだか作為的なんだかよく分からない帯の惹句につられて購入。
 確かに面白くはある。確かに一気に読んだ。しかし、なんなんだ、この手触りの良さは。……どうやらわたしは、「いい人」のたくさん出てくる小説、悪い人が類型的な小説、そういうのを、あまり好まないようだ。でも、この作品のよいところは、普段小説を読まない人にでも薦めやすいというところ。わたしは飽くまでわたしの快楽の為に読んでいるので、勝手に好きだの嫌いだの言ってみるが、私好みでなくっても、たくさんの人に愛されるだろう物語はたくさんある。最近読んだ中では、池永陽の「コンビニ・ララバイ」とかもそのカテゴリかな。
 でもまあ、私自身は物足りないわけで。わたしの中のホールデン的なるものが、「まあ、いい話なんだけどさあ……」とか言い出すわけで。
 若い時から、フランス文学とかよりロシア文学を愛したりしたのも、ざらざらしたもの、混沌としたもの、割り切れないもの、泡立つもの、そういうのに惹かれるタイプだからだったのかもしれないな。

●サイモン・マクバーニーの「エレファント・バニッシュ」を観る。
 村上春樹の同名短編集(英国版)をコラージュした内容。整理され、研ぎすまされた空間は悪くはないが、内容をほぼナレーションという形で処理されてしまっては、演劇的満足感は皆無。そしてこれもまた、異様に手触りが良いのだ。うーん、それが現代的ってことなのか? いやいや、そうじゃないだろう。
 フライングや映像の使い方で面白いところはあって楽しみはしたが、それより何より。ナレーションを担当する(というか出演する)俳優が粒ぞろいなので、小説の内容が耳から入ってきて、久々にかつて読んだたくさんの短編の印象をいちどきに思い出すことができた。どの記憶も、読んだ自分のその時々の感覚を引き連れて戻ってくる。大学の生協で「風の歌を聴け」に出会ってからというもの、全作品、ほぼ発売と同時に入手して読んだきた。そんな作家、そういえば、ほかにはいないな。
 休みのうちに、村上氏の短編を一気に再読してみようか。

●昼夜逆転の生活は続き、しかも昼が気持ちよいものだからついつい起き続けて、このところ、3時間ずつくらいしか寝ていない。それでも元気でいる。いつか手痛いしっぺ返しを食らいそうでこわい。
 


MailHomePageBook ReviewEtceteraAnother Ultramarine