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2003年07月24日(木) 愚かな自分。●シカゴ育ち(スチュアート・ダイベック)

●日曜日から、書かなかった。本当に、なんとも言えない日々になってしまったから。

●月曜日。
 美味しいお肉を買うために、デパートを奔走。GOに電話をして「ケーキはどうする?」と聞いたら、誕生日にケーキでお祝いしたことがないからやってみたいと言う。でも、たくさん食べられないから小さいのにしてねと、かわいいことを言う。トップスのチョコレートケーキの一番小さいやつを買う。
 大荷物にへこたれたわたしは、またGOに電話して、駅で待ち合わせ。彼は小さなポーターさん。

 食卓で、GOはわたしのプレゼントした恐竜の骨の発掘セットに夢中。ピンクの土を掘っていくと骨が現れるはずなのだが、けっこう本格的に土が固まっていて、なかなか出てこない。工作好きの彼は、飽きずに熱中。
 わたしは台所で、自分だったら絶対買わない高級ヒレ肉を、緊張して焼く。我ながら、見るからに美味しそうな焼き色で出来上がる。
 ケーキにろうそくを9本立て、火をつけて消灯。おじいちゃんと二人でハッピーバースデイの合唱。生まれてはじめてケーキのお祝いを受けたGOは、一息で見事に火を消した。
 でも、子供って、生意気なことばだけ覚えてはいても、可愛いもので、この「ろうそくの火を吹き消す」ってことに夢中になってしまった。食事の後、火をつけては自分で部屋の明かりを落とし、消すって動作を、何度繰り返したろう? ろうそくはアルミ箔のところまできれいに溶け去り、わたしは第2弾をさしてあげた。

 二人でわいわい言い合いながら人生ゲーム。そのあと、GOが近所に住むカエル探索に行こうといった時、恋人から電話を受けた。

 わたしは恋人に会いに行くことを選んだ。

 ふだんは散歩などしようと言わない彼が、そう言って、わたしたちは渋谷から散歩を始めた。朝まで、様々な話をする。
 一日前より、よけいに心が揺れる。4年間思い続けた、わたしが彼に持つ親密さが、育て続けた親密さが、今更、「いいの?」と問いかける。
 隣にいると、「ああ、この人が好きなのだ」という気持ちが化け物のようにふくれあがってくる。
 それでもA氏と結婚するのだという自分のことばが、何やら宙に浮いて行き場を失っているような気さえし始める。

●火曜日
 昼過ぎまで寝て、仕事をこなす。A氏に会う勇気がない。
 夕方、また電話を受け、恋人に会いに出かける。
 隣り合って食事して、眠くなってしまった彼と、彼の家へ。怖くて今まで入れなかった、奥さんと暮らしていた家。
 彼はソファーですぐに眠ってしまい、わたしは4時間後彼を起こすまで、最近読んだ本2冊の感想を書き上げる。久しぶりに、紙と鉛筆で書く。カルバドスをなめながら。
 起こした彼は、すぐに仕事を始め、わたしは書き続けた。電車が動き出したので、帰路につく。……それだけのこと。……でも、それだけのことが、いちばんのA氏に対する裏切りだと思い、情けなくなった。

 分かれ道の一方を選び、もうわたしは引き返せないところまで歩いてしまったのだと、分かったようなことを、偉そうなことを、書きつづってきた。でも、わたしは、一歩だって進んではいなかった。

 夜。A氏がやってきた。
 愚かな自分をさらすしか、わたしには出来ない。
 色んなことを、言って、聞いて、訊ねて、答えて、最後に行き着いたところは、「あいつを愛人にしてでも、俺と結婚したいなら、そうしよう。俺はそれでも一緒に暮らしたい」だった。

 心配し続けて眠りの足りなかったA氏はベッドですぐに寝息をたてはじめ、わたしは翌日の打ち合わせにそなえて遅れていた仕事を急ピッチで進める。夜通しの集中した仕事。9時半に眠り、10時半に仕事にでかける。

●そして今。
 精神が高揚していて、眠気は訪れない。
 A氏と結婚しようという気持ちは変わらない。でも、どうしてここまで自分は愚かなのだろうと、どうしようもないのだろうと、恥じ入る気持ちが膨れていく。
 でも、それでも、人を傷つけてでも、裏切ってでも、恋人のことを考える自分を、否定できない。

 これから、恋人が日本を離れ、A氏と二人の時間が過ぎて行く中で、わたしは変わっていくだろうか?


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