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| 2003年08月03日(日) |
原石たち。●輝く日の宮(丸谷才一) |
●まずは、歌稽古から。今日借りたスタジオまでは自転車で30分位の距離。待ちかねた晴天の下、迷わず自転車を駆る。心地良い。
このたびの出演者の平均年齢は、驚くほど低い。なんたって、中学三年生の女の子さえいるんだから!(まあ、子役は別と考えて) 最初のダンスのレッスンのあと、着替えた女の子たちを見て驚いた。なんと制服姿。しかも、稽古だ、仕事だ、と張り切っているものだから、わたしなんかよりしっかりお化粧しており、どう見てもコスプレ状態。中身は可愛いことこの上ないんだけどね。
まだ商品になっていない段階から磨き上げる作業が、この仕事の稽古期間には含まれている。もちろん、磨きがいのある原石を選んではあるわけだが、今日の歌稽古を聞きながら「原石も原石だな、こりゃあ……」とスタッフは頭を抱える。……ということは、わたしは奴らを、思いっきり愛してしまうということだ。(10月までこいつらと暮らすんだ)と思いつつ、一人一人の緊張した顔を眺める。こういう時、わたしは最も優しくて安定した気持ちになれる。誰かに、何かを渡すことができるということ。誰かに、力になることができるということ。誰かが、自分の力を求めているということ。そういうことが、必要な自分を持ち上げてくれる。
●丸谷才一の「輝く日の宮」という小説を読み終えた。源氏物語の失われたひとつの巻をさぐる主筋に、女性国文学者の恋愛譚が絡む。 この女性の恋愛たるや、まあ惨憺たるもの。自分の中に描きたい物語がまずあって、自分をそこに当て込んでいくような恋愛の仕方。ドラマティックなことが大好きで、すぐにドラマ性に踊らされて、しなくてもいい恋愛をする。必要なのは、生活じゃない。知的に人生を読み取っていける環境。 たまにいい出会いがあっても、自分はどういう女であるべきかという思いこみに惑わされて、二人の関係性で行動が選べない。相手の男も、おんなじタイプ。やっぱり似た者を呼ぶものなのだ。そして、当然のごとく、崩壊する。だって、それぞれに自分のことしか考えていないんだもの。
で、わたしは、相当に落ち込んだ。眠れなくなってしまった。 だって、それは、わたしの似姿なんだもの。「古典馬鹿」と笑いながら読み進めるうち、ふっと、「あ、これ、わたしだ」と気づいたときの落ち込み。……ひどかった。 こんなもの読むんじゃなかったと思っても、もう遅い。 もうすぐA氏の仕事も一段落する。さあ、どうするんだ、わたし。
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