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2003年08月05日(火) 俯瞰したり、凝視したり。●疾走(重松清)

●あっという間に、忙しい人に戻ってしまった。
 でも、よく休んだせいか、人に対してかつてよりおおらか。このところ、働くことが、いたって楽しい。
 ただ、今日と明日は受難の日。
 今日は自宅で資料つくりと、スケジュール調整。一日中携帯で連絡を取っていたような気がする。家は事務所状態。……と言っても、様々な経費は全部持ち出し。個人事業者はつらい。
 明日は、恐怖の打ち合わせデー。朝から4件の打ち合わせを、すべて別場所で、という冗談のような1日。しかも、電車で帰れる見込みはほとんどない。仕事だから、ま、仕方ないか。

●重松清氏の新刊「疾走」を読んだ。

 少年の自殺。少年の殺人。少年の放火。
 頻繁に社会を浮き足立たせるこれらの事件。
 親も、友人も、教師も、精神科医も、誰も、少年の「内」には届かない。
 なぜ、少年は、そこに至ったか。

 重松氏は、それを書いた。
 一人の、ごくごく当たり前な少年が、殺人を犯し、放火を犯し、逃亡し、自殺を選んだ、その長く短い時間を。丹念に。実に実に丹念に。

 今までの重松作品から想像できない強靱さ、息苦しいまでの緊張感だ。

 どうしても、書かずにはいられなかったこと。だからだろう。

 でも、余りにやるせないので、小説を書くって一体なんなんだろう? って考え込む。小説を読むって、一体なんなんだろう? って考え込む。
 どうも辛くって、やりきれない。

 この心のもやもやを、うまく言い表せない。
 
●また悪い夢を見た。休みの間、あまりにたくさんの本を読み、たくさんのドラマに浸かりこんで過ごしたので、しばしば、物語は夢に侵入し、目覚める時の、現実のわたしを脅かした。

 仕事が始まり、俯瞰する暮らしから、凝視する暮らしに移っていくものの、目の裏に、様々な焼き付いたドラマは、残っていくのだろう。

 何か、別種の見方をしたい。と、切望していた。
 宇都宮で、舟越桂氏の作品展が開かれているらしい。次の休みに(休みが休みになれば)、行ってみようかと思う。往復4時間はかかるが、きっと無駄じゃない。


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