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2004年04月18日(日) 二日間。●なぜ戦争は終わらないか(千田善)

●土曜の夜、長らくいろんな仕事を共にしてきたプロデューサーが二人、観にきてくれる。終演後、一緒に食事。
 現在の仕事に入ってから、どうも一緒に呑みたい相手が少なく、この酒好きのわたしがほとんどアルコール断ちの状態。飲み友達の二人がやってきてくれたので、飲むわ飲むわ、話すわ話すわ。
 現在のわたしの仕事、もうすぐ始まる次の仕事、仕事仲間たちの様々な現状、果てはこのところの社会情勢など、尽きることなく、9時から2時半まで。
 望ましい相手が得られると、話すということが自己の表明や伝達だけではなく、他者とともに思考を構築していくことなのだということを思い出す。

●ぽかぽか陽気の日曜日。一回公演を終え、本来は次の仕事の勉強をしなければいけないのだが、ついつい映画館へ。ひとりの時間をもてあましていた製作の若い女の子を誘ってあげ、仕事の愚痴など聞いてあげ、ちょっと美味しい遅いランチをご馳走する。それでも時間があまっていたので、近くの写真美術館で、ロバート・キャパ展。断片的にしか見たことのなかった彼の生涯などを知る。
 戦争を撮るとき、彼は冴えた。戦争があったから、彼は名を残した。戦争は彼の人生を彩る冒険の場であり、仕事場であった。ジャーナリストの仕事のあり方自己責任の取り方などが口々に語られる現在であるが、わたしは彼の写真を次次と眺めながら、その人生を否定することはできなかった。20代前半から、戦場にて、驚くべき被写体との近さで撮影を始め、名声を得た彼が、ベトナムで撮影中、地雷を踏んで死ぬまで、確かに彼の切り取った時間は、息づいている。
 タローという恋人と、20代、戦場で仕事を共にしていたことを、わたしはこれまで知らなかった。美しい恋人の写真がわずかに展示されていた。タイプを打つ姿、スペイン内戦で、壁に隠れて銃をかまえる兵士の横に、迷彩服を着て並ぶ彼女。彼女は、戦車に轢かれて若くして亡くなっている。
 過去の個人の人生を知ること、他者の時間を想像してみることが、現在の時間を考える自分を支え、変えていく。

 映画は、「グッバイ、レーニン!」を。壁が崩れる直前の東ドイツで、社会主義を高揚するために働いてきた母が、事故で昏睡状態に。ようやく目覚めたときは、すでに生活はすっかり西側色に取り囲まれている。母にショックを与えないために、息子は懸命に喪われていく東側を母の周りにだけ再現しようとするのだが……。
 着想や小さなモチーフのひとつひとつは卓抜なのだが、シナリオのバランスがいかんせん悪い。説明不足なシーンがあり、饒舌すぎるシーンがある。素材が素晴らしいだけに、ドラマ作りの反面教師となるような映画。とは言え、忘れられないだろう美しいシーンもある。大事なのは、とりあえず作ることなのだというエネルギーも、看取する。


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